決議・声明

沖縄県内市町村において、子どもの意見を反映した実効性ある子どもの権利条例を制定し、必要な措置を速やかに講ずることを求める会長声明

 

1 沖縄県内における子どもの権利条例を巡る動向 

 沖縄県では、2026年(令和8年)7月31日、「沖縄県こどもの権利条例」(以下「県条例」という。)が公布された。那覇市や宮古島市でも、子どもの権利を基礎に据えた条例制定に向けた検討が進められている。

2 子どもの権利条約及びこども基本法

 日本が1994年(平成6年)に批准した国連子どもの権利条約は、子どもを権利主体として位置付け、差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)、生命・生存・発達への権利(第6条)、意見表明権(第12条)を基本原則としている。

 また、2023年(令和5年)施行のこども基本法は、子どもの意見が年齢及び発達の程度に応じて尊重され、その最善の利益が優先されることを基本理念として明記している。

 このような条約や法律の理念を実現するためには、子どもに関する施策のあらゆる場面で、子どもを権利の主体として位置付ける視点が不可欠である。

3 県条例の意義と市町村における子どもの権利条例の必要性

 こども基本法第5条は、地方公共団体に対し、こども施策を総合的に策定し、実施する責務を課している。子どもの権利を地域社会に根付かせるためには、子どもを権利の主体であることを明確に位置付け、行政、家庭、学校、地域及び関係機関が共有すべき理念と責務を定めるとともに、その理念を具体的な施策や制度として実現していくことが重要である。

 この点、沖縄県において県条例が制定されたことは、県全体として子どもの権利を保障する姿勢を明確にし、子どもに関する施策を子どもの権利の視点から推進するための共通の理念と方向性を示したものとして、大きな意義を有する。

 そして、市町村は、保育、教育、子育て支援、福祉、保健、居場所づくりなど、子どもの日常生活に密接に関わる多くの施策を担う、子どもに最も身近な行政主体である。その市町村において、子どもの権利を施策の基本に据え、それぞれの地域の実情に応じて、子どもの意見を聴き、これを施策に反映する仕組みを整えるとともに、子どもが権利侵害や困難に直面したときに安心して相談し、必要な支援や救済につながることのできる体制を整備することが重要である。

 県条例が、沖縄県全体に共通する子どもの権利保障の理念と方向性を示すものであるとすれば、市町村条例は、その理念をそれぞれの地域の実情に応じて具体化し、子どもたちの日々の生活の中で実現していく役割を担うものである。県と市町村がそれぞれの役割を果たし、相互に連携することによって、沖縄県内のどこに暮らす子どもであっても、その権利が等しく尊重され、保障される環境を整えていくことが求められる。

4 条例制定過程に子どもの意見を聴取すべきこと

 ここで重要なことは、条例の内容として子どもの意見表明権を保障するだけでなく、条例の制定過程においても、権利の主体である子どもの意見を聴き、尊重することである。

 こども基本法第11条は、国及び地方公共団体に対し、こども施策を策定、実施、評価するに当たっては、対象となるこどもや養育者、その他関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずることを求めている。条例の制定に当たっては、子ども会議、アンケート、ワークショップ、学校での意見交換会等を通じて、幅広く子どもの意見を聴き、その内容を条例に反映させるとともに、どのように反映されたかを子どもたちに分かりやすく説明することが必要である。

 子どもが条例づくりの過程に主体的に参加する経験は、自らの意見が社会を変え得るという実感を育み、民主主義の担い手として成長する貴重な機会となる。子どもの権利条例は、子どものために大人が作る条例ではなく、子どもと共につくり上げる条例でなければならない。

5 結論

 よって、当会は、沖縄県内市町村に対し、権利の主体である子どもの意見を幅広く聴取し、これを十分に反映した上で、子どもの権利を保障する条例を制定するとともに、相談・救済機関の設置その他必要な措置を速やかに講ずるよう求めるものである。

 当会は、これまでも子どもの権利特別委員会を中心として、子どもの権利を保障するための活動に取り組んできた。また、2024年(令和6年)12月には、「子どもの権利条約に基づく子どもの権利保障の推進を求める会長声明」を公表し、2025(令和7)年12月23日には、「未来を創る子どもたちへ ― あなたの声を大切にする社会を実現するための宣言」を採択した。当会は、今後も行政、教育機関、関係団体等と連携しながら、子どもが安心して暮らし、学び、成長し、自らの意見を表明できる社会の実現に向けて、全力を尽くす所存である。

 

2026年(令和8年)8月31日
沖縄弁護士会
会長  金  髙    望

 

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