法律コラム

 

国章損壊罪は必要か

2026年5月19日 琉球新報 法律何でも相談コラム 掲載 

国章損壊罪は必要か

 

Q.政権与党が国章損壊罪創設を検討していますが、どう考えたらよいでしょうか。

 

A.自民維新両党は国章(国旗)損壊罪の創設を合意しており、参政党はすでに法案を国会に提出しています。

 これで思い出されるのが、1987年沖縄国体での日の丸焼却事件。裁判では表現の自由が争点になりましたが、判決は器物損壊罪で有罪でした。今でも他人の旗を損壊す れば処罰の対象になるのです。

刑罰規定を制定する際には、人々や社会の安全が危険にさらされるおそれがあることが前提となりますが、今、国旗損壊を新たに処罰しなければならない社会状況があるのか疑問です。

 外国国章損壊罪が刑法にあるのになぜ日本の国章損壊罪はないのか、という人もいます。しかし、外国国章損壊罪は相手国との外交に悪影響が生じる危険を考慮したもので、同じ「旗」でも保護すべき目的が異なっており、同列にとらえられません。

 国章損壊罪の創設は、むしろ日の丸などを用いた表現の自由を侵害するおそれが指摘できます。損壊状況を撮影した映像の送信まで処罰するという案も出る一方で、「人に著しく不快な感情を催させる方法で」の損壊だけを処罰するという案なども出ています。しかし、処罰の基準が曖昧ですから、文化芸術など多様な場面で日の丸の意匠が利用されたときに処罰される可能性も出てくるのです。

 ドイツやイタリアは戦前の国旗を変更しましたが、日本の国旗は戦時中と同じですから、これに対する人々の思いはさまざまです。国旗損壊を処罰するとしている国もあれば、アメリカのように処罰は憲法違反だとしている国もあります。人々が息苦しい思いをすることなく自由に暮らせる社会をつくっていくために、この法律が必要かどうか考えてみてはどうでしょう。

 

沖縄弁護士会

会員 加藤 裕

 

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