決議・声明

憲法改正手続法改正案に反対し、改めて同法の見直しを求める会長声明
 
 
 現在、日本国憲法の改正手続に関する法律(以下「憲法改正手続法」という。)改正案が国会で審議されている。
憲法改正手続法は、憲法第96条に定める憲法改正における国民投票に関する手続きを規定するとともに、憲法改正の発議に係る手続きの整備を行う法律で、2007(平成19)年に成立し、その後、2014(平成26)年に投票年齢を18歳以上にするなどの部分改正がなされた。本改正案は、2016(平成28)年の公職選挙法の改正により導入された投票環境向上のための規定を整備するため、2018(平成30)年6月に国会に提出されたものである。
憲法改正手続法においては、改憲の賛否の議論が公平公正に取り扱われるよう、テレビ、ラジオの有料意見広告規制のあり方が検討されなければならず、また、主権者である国民の意思を十分かつ正確に反映させるため、最低投票率制度が導入されなければならない。これらの点については,同法成立時の参議院附帯決議において2010年の法律施行までに検討を加えることが求められたが、具体的な対処がなされなかったため2014年改正時の参議院附帯決議でも速やかに検討するよう求められている。しかしながら、本改正案においては、有料意見広告規制及び最低投票率制度については依然として具体的な対処がなされておらず、附則において有料広告の制限などについて法律施行後3年を目途に検討を加え必要な措置を講ずるとされ、問題は先送りされている。
当会においては、憲法改正手続法に関し、2018(平成30)年5月の「憲法9条の改正論議につき問題点を指摘するとともに憲法改正手続法の見直しを求める決議」において、有料意見広告放送のあり方や最低投票率の規定などに関する改正を求めた。日本弁護士連合会をはじめ、他の弁護士会においても同法成立以降同法の改正、見直しを求める決議、会長声明が発せられている。
憲法改正手続法成立から約14年が経過し、二度目の改正がなされようとしているにもかかわらず、附帯決議において繰り返し検討が求められた課題について何ら対処されないことは極めて問題である。難しい論点を含み、議論の集約に時間を要する有料意見広告放送のあり方や最低投票率の規定などに関する改正を先送りにし、とりあえず、公職選挙法と横並びの無難な改正をした上、憲法改正の実質的議論を前に進めようという意図が見て取れる。このままでは、公平性の確保や国民の意思の反映に疑義のある不十分な手続法のもとで国民投票がなされてしまいかねない。
当会は、これらの課題に対処していない審議中の憲法改正手続法改正案に反対するとともに、憲法改正案に対する賛成・反対の意見が公平に扱われるための有料意見広告規制のあり方の検討や、憲法改正国民投票において国民主権を直接行使する主権者の意思を十分かつ正確に反映させ、憲法改正の正当性に疑義が生じないようにするための最低投票率制度の導入などについて、憲法改正手続法の見直しを早急に行うことを求める。
 
 
2021年(令和3年)6月9日       
 
沖縄弁護士会             
会 長  畑    知 成

 

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