決議・声明

普天間飛行場PFOS(ピーフォス)漏出事故に抗議し、

継続的な環境影響調査と再発防止への取組みなどを求める会長声明

  2020年4月10日、米軍普天間飛行場において、有機フッ素化合物であるPFOS(ピーフォス)を含む泡消火剤が放出され、米軍基地外に漏出する事故が発生した。漏出した泡消火剤は、雨水排水路から河川、海洋に流出したほか、風にあおられて宜野湾市内の住宅街にも大量に落下し、市民の生活圏に拡散した。

漏出事故直後から泡消火剤の除去作業を行ったのは宜野湾市消防本部であり、宜野湾市が国を通じて米軍に対して泡消火剤の回収を要請したにもかかわらず、米軍や国による効果的な対応はなされなかった。その後、国、沖縄県、宜野湾市による立入調査が行われたものの、土壌の採取までに事故から1か月が経過し、事故現場である格納庫周辺の土壌のサンプリングについては、地中から直接採取できず、米軍がすでに剥ぎ取った土が提供されたにとどまるなど、十分な調査がなされたとは言い難い。

 PFOSは、人体への発がん性が指摘され、環境中でほとんど分解せず生物中に蓄積することなどから、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約で国際的に製造・使用や輸出入が制限されているが、近年、沖縄県内にある米軍基地周辺の河川や地下水からは、米国の生涯健康勧告値を超える高濃度のPFOSが検出され続けてきた。

この点について当会は、2019年7月24日付け「PFOS等による環境汚染について、国及び地方自治体による米軍基地内への立入調査と汚染除去・防止対策への積極的な取り組みを求める会長声明」の発表及び2020年3月27日付け「平穏かつ安全な日常を確保するために、日米地位協定を抜本的に改定することを求める決議」の採択をし、米軍基地内への立入調査などの必要性を指摘してきた。

 今回の漏出事故により、普天間飛行場周辺住民の健康・安全が脅かされる事態が発生したことについて、当会は米軍に対して強く抗議する。同時に、米軍由来のPFOSによる環境汚染に対し、これまで実効性ある対策を講じてこなかった日本政府に対しても抗議する。

 国及び米軍は、今回の事故を含め、これまでのPFOSの漏出状況を把握するため、事故発生場所である普天間飛行場内のほか、周辺の土壌、河川、海洋等における継続的環境影響調査の実施及びPFOSの使用中止を含む事故の再発防止のための取組みを行うべきである。さらに、事故発生時に迅速かつ実効性のある環境影響調査を実現するためには、日米地位協定の見直し、少なくとも環境補足協定の改定が必要である。

  よって当会は、国及び米軍に対し、PFOS漏出事故についての継続的な環境影響調査と事故の再発防止への取組みを行うこと、日米両政府に対し、日米地位協定ないし環境補足協定の改定を強く求める。

2020年(令和2年)5月22日

沖縄弁護士会       

会 長  村 上 尚 子

 

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