決議・声明

日米両政府による新型コロナウイルス在日米軍内感染者に関する
情報の公表拒否に抗議する会長声明
 
 新型コロナウイルスの感染拡大が全国的に深刻化の一途をたどる中、沖縄県内においても感染が急激に拡大している。そして、感染者は在沖米軍基地でも確認され、報道によれば、本年3月に嘉手納基地所属の米兵2名とその親族1名が感染したとのことである。
多くの米軍基地を抱える沖縄県、特に米軍基地が集中する沖縄本島中部においては、勤務や取引のため頻繁に基地内外を行き来する県民が多く存在し、また基地近辺の商業地域は、米軍関係者により日常的に利用されている。基地周辺住民はじめ県民が感染のリスクから身を守るためには、米軍関係者の感染について必要な情報を得る必要がある。
 ところが、米国防総省は、安全保障上の理由から、基地別や部隊別の感染者数や感染状況について公表しない方針を示し(方針適用日は日本時間本年4月1日)、我が国の外務省も、米国防総省の当該方針を理由に、公表を拒否している。かかる方針によれば、沖縄県民は、在沖米軍関係者に感染者が出ても、どの基地に何人の感染者が出たかという最低限の情報すら知らされないことになる。
この点、日米両政府は、2013(平成25)年1月の日米合同委員会において、「在日米軍と日本国の衛生当局間における情報交換について」を取り交わし、「人の感染症」について60を超える疾病を挙げ、「確認した場合は、可能な限り早期に通報する」ことで合意をしている。外務省は、本年4月3日の衆議院安全保障委員会において、当該合意に基づき、在日米軍関係者の感染情報は米軍から地元の保健所に提供し共有される旨答弁した。しかし、報道等に接する限り、情報提供が必要十分でない可能性があり、また、米軍によって提供される情報が恣意的になるおそれも払拭できない。
何より、県に感染情報が提供されたとしても、日米両政府による公表拒否により県が必要な情報を県民に知らせることができないとなれば、県民は、感染のリスクから身を守ることが困難となる。
 よって当会は、米国政府に対して、在日米軍基地内における新型コロナウイルスの感染について必要十分な情報を沖縄県に確実に提供し、県の調査に積極的に協力することを求めるとともに、日米両政府に対し、基地別や部隊別の感染者数や感染状況の公表を拒否していることについて厳重に抗議する。
以上
 
2020年(令和2年)4月15日
沖縄弁護士会       
会 長  村 上 尚 子

 

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