決議・声明

 最低賃金額の大幅な引上げを求める会長声明

1 沖縄県の最低賃金は、長らく全国でも最低額に甘んじており、この最低賃金額の低さが、沖縄県の貧困の重大な要因となってきた。

この最低賃金に関し、中央最低賃金審議会は、本年7月頃、厚生労働大臣に対し、2019年度地域別最低賃金額改定の目安についての答申を行う予定である。

  昨年、同審議会は、全国加重平均で26円の引上げ(全国加重平均874円)、沖縄県の属するDランクの県については23円の引上げとする答申であったが、2018年の沖縄地方最低賃金審議会は、これよりも高い25円の引上げ額とした。

  これにより、沖縄県の最低賃金がようやく全国最低額から脱却するに至ったことは、沖縄県が貧困から脱却するための一歩として評価すべきことである。

2 しかしながら、時給762円(平成30年10月1日以降)という金額では、いまだ貧困から脱却するためには十分な水準とは言いがたい。フルタイム(1日8時間、週40時間)で働いたとしても、月173時間として、月収で13万1826円、年収158万円程度にしかならないからである。

  この収入では、労働者が賃金だけで自らの生活を維持し、将来のための貯蓄をしていくことは極めて困難であり、最低賃金法第1条が目的として掲げる「労働者の生活の安定」にはほど遠い。

沖縄県は、平成27年度調査における子どもの相対的貧困率(平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子どもの割合)が29・9%に上るという、全国的に見ても最も深刻な貧困状態にある。

貧困からの脱出のためには、最低賃金額の大幅な引上げが直接的かつ効果的である。特に、正規労働者も非正規労働者も、男性労働者も女性労働者も、全国平均の3分の2程度の賃金水準にとどまる状態にある沖縄県においては、最低賃金額の大幅な引上げの必要性は高い。

3 全国を見ても、日本の相対的貧困率は15.6パーセントと発表されており、依然として高い水準にある。貧困と格差の拡大は、女性や若者に限らず全世代で深刻化している。

働いているにもかかわらず貧困状態にある者の多くは、非正規雇用労働者として最低賃金付近での労働を余儀なくされており、最低賃金の低さが貧困状態からの脱出を阻む大きな要因となっていることは疑いない。

そもそも日本の最低賃金は先進諸外国の最低賃金と比較しても著しく低い。フランス、イギリス、ドイツの最低賃金は、日本円に換算するといずれも1100円を超えており、アメリカでも、ワシントン州やカリフォルニア州の一部の市などが15ドルへの引上げを決定したのを始め、全米各地の自治体で最低賃金大幅引上げが相次いでいる。国際的に見て日本の最低賃金の低さは際立ってきている。

4 政府は、2010年(平成22年)6月18日に閣議決定された「新成長戦略」において、 2020年(令和2年)までに最低賃金を「全国最低800円、全国平均1000円」にするという目標を明記した。

また、2016年(平成28年)6月2日に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」にも、最 低賃金を毎年3%程度引き上げ、将来は全国加重平均1000円程度にする方針が示されているが、この方針によれば、最低賃金額が1000円に達するのは2024 年(令和6年)となる。時給1000円という水準はフルタイム(1日8時間、週40時間)で働いても年収は約208万円であり、単身者世帯にとってすら最低限度の生活を維持するのに十分な額とはいえない。この最低限の目標の達成にすら5年を要するのでは,遅きに失する。

5 しかも、注意すべきは、この政府目標の1000円は、全国加重平均であるということである。

  東京などAランクについては、中央最低賃金審査会の答申は、2015年度(平成27年度)19円,2016年度(平成28年度)25円,2017年度(平成29年度)26円、2018年度(平成30年度)27円であるところ,Dランクはそれぞれ16円、21円、22円、23円となっており、この4年間だけでもAランクとDランクでは差が15円広がっている。

  こうして、最低賃金の地域間格差は縮まるどころか拡大しているのが現実である。この状態が続けば、全国加重平均で1000円となっても、沖縄県の最低賃金額が1000円に到達するのはまだまだその先でしかない。 必ずしもDランクの金額にとらわれることのない、早急な引き上げが必要である。

 以上の理由から、当会は、沖縄地方最低賃金審議会に対し、最低賃金額を大幅に引き上げる旨の答申をすることを求める。

2019年(令和元年)7月10日

     会    

 長  赤 嶺 真 也

 

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