決議・声明

無審査「令状」発付の原因調査結果と再発防止策の公表を求める会長声明

憲法33条及び35条は、裁判官が発する一定の要件を備えた令状によらなければ、逮捕及び住居等に対する捜索・差押をすることができない旨を定めている。捜査機関の逮捕等が人権を制約する強制処分であることに鑑み、裁判官による事前の審査を求めたものである。令状主義の原則と呼ばれ、人身の自由・住居の不可侵等を保障する、極めて重要なルールである。

ところが、昨年11月13日、この重要なルールを無にする重大な人権侵害・違法行為が発生した。那覇簡易裁判所の職員が、豊見城警察署からの逮捕状請求及び那覇警察署からの捜索差押許可状請求に対し、裁判官の審査を一切経ることなく、裁判官の押印を欠いた各「令状」を発行したのである。逮捕状等の令状を発付する権限は裁判官にあるところ、上記各「令状」は、単なる押印漏れの類ではなく、裁判官が審査のうえ発付したものではないことから、そもそも令状とはいえない。しかも、この裁判官の審査・発付にかからない「逮捕状」に基づき、被疑者が実際に逮捕されていたというのである。

マスコミ報道によれば、この過誤が明るみに出た同月30日、増田稔那覇地方裁判所長は、本件に関し、「誠に遺憾であり、裁判官や職員に注意喚起し、再発防止に努めたい」旨コメントしたとのことである。しかしながら、その後今日に至るまで、本件の原因等について、同裁判所からの発表はなされていない。

憲法は、令状主義を定め、裁判官に対し、捜査機関による人権侵害を抑止する重要な役割を担わせている。この度の過誤により、裁判官審査を経ず、そもそも令状とはいえない「逮捕状」等の「令状」が発行された結果、違法な身体拘束等がなされ、被疑者の人権が侵害されてしまった。かかる結果の重大性と令状主義の重要性に照らしたとき、「裁判所職員に注意喚起し、再発防止に努める」とのコメントをもって事態を収束させるような対応は、人権を守る最後の砦である裁判所の対応として、適切とは言い難いというべきである。那覇地方裁判所は、本来起こり得ない重大な違法行為がなぜ起きたのか、どのようにして再発防止を図ろうと考えているのかについて、県民はもちろん国民に対し、具体的に説明する義務がある。

当会は、人権侵害を抑止する重要な役割を担う裁判所に対し、このような前代未聞の重大な過誤を犯したことにつき猛省を促すとともに、速やかに、本件の原因に関する調査結果及び具体的な再発防止策を国民に向けて公表するよう求める次第である。

2019年(平成31年)2月28日 

沖縄弁護士会          

会 長  天 方   徹

 

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