死刑執行に抗議する会長声明
当会は,本年6月29日,政府がいわゆるオウム事件死刑確定者13名に対する死刑執行の準備に入ったというマスコミ報道を踏まえ,オウム事件死刑確定者を含むすべての死刑確定者について,死刑執行の停止を求める会長声明を発出した。
ところが,その1週間後の7月6日,上記13名中7名(うち6名が再審請求中であり,心神喪失の疑いのあるものも含まれている。)に対し,死刑が執行された。同日早朝の松本智津夫氏に対する執行報道後,続々と新たな死刑執行情報が追加報道されるというのは,前代未聞の異様な事態であった。誠に遺憾であるというほかない。国連犯罪防止刑事司法会議が我が国において開催される2020年を間近に控えるこの時期に,基本的人権の尊重という価値理念に立脚する我が国がこのような大量の死刑執行に及んだことについて,今後,国際的な批判が高まることは免れない。
犯罪により命が奪われた場合,失われた命は二度と戻ってこない。犯罪により身内の方を亡くされた遺族の方が厳罰を望むことはごく自然なことであり,その心情は十分に理解できるところである。他方で,刑罰制度は,犯罪への応報であることにとどまらず,社会復帰の達成に資するものでなければならない。
そのため日本弁護士連合会は,死刑制度が抱える様々な問題点を踏まえ,2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであると宣言した。国際的には死刑廃止が大きな潮流になっていること,死刑判決を下すのは人であり,死刑制度がある以上,誤判による処刑を避けることはできないことなどに照らし,当会もこの宣言を支持するものである。
以上のことから,当会は,オウム事件により命を落とされた方々の遺族に対し,深い哀悼の意を表明するとともに,今回の死刑執行に強く抗議し,改めて,政府が,死刑を廃止するまで全ての死刑執行を直ちに停止した上で,2020年までに死刑制度を廃止するよう,求める次第である。
2018年(平成30年)7月19日
沖縄弁護士会
会 長 天 方 徹