修習費用貸与制下の司法修習終了者に対する施策の早期実現に向けての会長声明
2017(平成29)年4月19日、司法修習生に対して、月額13万5000円、住居が必要となる者にはさらに月額3万5000円を支給する修習給付金制度を創設する裁判所法改正がなされた。
司法は、三権の一翼として、法の支配を実現し国民の権利を守るための枢要な社会インフラであり、法曹はこの司法の担い手として公共的使命を負っている。そこで国は、高度な技術と倫理感が備わった法曹を国の責任で養成するために、修習専念義務を課す現行の司法修習制度を、1948(昭和23)年、日本国憲法施行と同時に発足させ運営している。そして、戦後60余年にわたり維持されてきた司法修習費用給費制(以下「給費制」という。)を2011(平成23)年に廃止したことを見直して、今回の裁判所法改正によって修習給付金制度を創設したことは、司法修習生に対してあるべき経済的支援策の回復に向けての大きな前進である。
残念ながら、上記裁判所法改正法は「法曹人材確保の充実強化の推進」という趣旨から給費制が廃止されていた貸与制下の修習生について遡及適用が見送られた。そのため、2011(平成23)年度から2016(平成28)年度までの6カ年間に修習を遂行した新65期から70期の司法修習終了者(以下「貸与世代」という)の経済的負担が旧65期以前及び71期以降の修習終了者に比して著しく重くなるという不公平・不平等な事態を発生させた。
しかも、「貸与世代」の法曹は約1万1000人に達し、全法曹(約4万3000人)の約4分の1を占め、看過できない事態となっている。
当会では「貸与世代」との懇談会を開き、意見を聴き取ったところ、経済的理由によって業務や活動に制約が生じている、奨学金と併せた返還となるため人生設計にも影響がある等と率直な声があった。
司法修習制度が、修習専念義務を課したうえで国の責任で法曹を養成する制度である以上、修習に専念できるに足る生活保障を行うのは当然であり、「貸与世代」
に生じている不公平・不平等な事態を放置することは不合理かつ不条理というべきである。
よって、当会は、法務省、国会に対して、「貸与世代」の経済的負担が旧65期以前及び71期以降の修習終了者に比して著しく重くなったままであるという不公平・不平等な事態が発生していることについて、貸与金の免除等の方法によりこれを是正する立法等による措置を講じることを求める。さらに、最高裁判所におかれては、法務省、国会に対して、「貸与世代」の経済的負担の解消に向けた行動を採るよう求めるものである。
2018(平成30)年5月18日
沖縄弁護士会
会 長 天 方 徹