死刑執行に抗議する会長声明
昨年12月19日,東京拘置所において2名に対して死刑が執行された。いずれも弁護人が付いて再審を請求していた。昨年8月に就任した上川陽子法務大臣による初の執行であり,第2次安倍内閣以降の死刑執行は,合計12回目・21名に上る。
2014年(平成26年)3月,静岡地方裁判所は,袴田巖氏の第二次再審請求事件について,再審を開始し,死刑及び拘置の執行を停止する決定をした。もし死刑の執行がなされていたならば,まさに取り返しのつかない事態となっていた。死刑判決を下すか否かは人が判断する以上,えん罪による処刑を避けることができないのである。このようなえん罪の危険性等を踏まえ,日本弁護士連合会は,第59回人権擁護大会において,「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,その中で,日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを宣言した。
国際的に見ても日本の状況は異例である。一昨年末現在,法律上又は(10年以上死刑が執行されていない)事実上の死刑廃止国は141か国に上る。同年実際に死刑を執行した国は日本を含めわずか23か国であった。OECD加盟国の中で死刑制度を存置している国は,日本・韓国・米国の3か国のみであるが,韓国は事実上の死刑廃止国である。米国でも死刑を廃止する州が増加している。こうした状況の中で,国際人権(自由権)規約委員会は,日本政府に対し,死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告している。
直近の政府世論調査によれば,「死刑もやむを得ない」と回答した者が約80%に上り,政府はこの数字を根拠に死刑制度の当否について議論しようとさえしない。しかし,この約80%のうちの約41%が「状況が変われば,将来的には死刑を廃止してもよい」と答えている。また,仮釈放のない終身刑が導入されるならば「死刑を廃止する方がよい」と回答した者が約38%に上る。死刑を容認する者の考えも一様ではなく,条件次第で意見が変わることを示している。
このような国際的・国内的動向を踏まえ,当会は,今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに,2020年までの死刑制度廃止を目指し,死刑執行を停止した上,死刑に関する情報を広く国民に公開し,死刑制度の廃止についての全社会的議論を喚起することを求めるものである。
2018年(平成30年)3月9日
沖縄弁護士会
会長 照 屋 兼 一