決議・声明

調停委員任命に際し外国籍の者を排除しないことを求める会長声明

1 2003年(平成15年)10月、兵庫県弁護士会が、神戸家庭裁判所からの家事調停委員推薦依頼に対し、同会に所属する韓国籍の弁護士を推薦したところ、同裁判所から推薦の撤回を求められたことに端を発し、2016年(平成28年)、2017年(平成29年)にも、大阪弁護士会、兵庫県弁護士会、京都弁護士会が、同会に所属する弁護士を調停委員として推薦したにもかかわらず、各裁判所が最高裁判所への任命上申を拒絶するなど、最高裁判所が今まで、外国籍弁護士の調停委員への任命を拒否した人数は延べ30人以上に上る。このように、近時、最高裁判所は、外国籍を有する弁護士の調停委員への任命を拒否し続けている。

2 調停委員の採用に関する「民事調停委員規則及び家事調停委員規則」には、委員の資格に関して日本国籍を要するとの規定はない。
現に、1974年(昭和49年)から1988年(昭和63年)までの14年間、大阪弁護士会に所属する外国籍の弁護士が、調停委員として任命されていた先例もある。

3 最高裁判所は、日本弁護士連合会による、調停委員・司法委員の採用における日本国籍を必要とする理由に関する照会に対して、2008年(平成20年)10月14日付けで、法令等の明文上の根拠規定はないことを認めつつも、「公権力の行使に当たる行為を行ない、もしくは重要な施策に関する決定を行ない、又はこれらに参画することを職務とする公務員には、日本国籍を有する者が就任することが想定されると考えられるところ、調停委員・司法委員はこれらの公務員に該当するため、その就任のためには日本国籍が必要と考えている」と回答した。
しかしながら、そもそも調停委員の職務は、当事者の意思を尊重しながら紛争を解決に導くことを内容とするものであって、そこに公権力の行使を伴う強制的作用はない。また、調停調書は確定判決と同一の効力を有するものの、その拘束力は当事者の合意に基づくものである。
このように、調停委員の職務内容は、調停委員が公権力の行使に当たる行為を行なったり、もしくは重要な施策に関する決定を行なったり、又はこれらに参画するものではない。

4 最高裁判所の近時の運用は、法令に根拠もなく、合理的な理由もないのであって、国籍を理由とする不合理な差別として、憲法14条、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)26条及びあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)5条に反するものである。このような最高裁判所の対応に対しては、国連人種差別撤廃委員会により、日本国籍を有しない者が調停委員として活動できるように繰り返し勧告がなされているなど、国際的にも見直しの勧告がなされている状況にある。

5 よって、当会は、最高裁判所に対し、このような近時の運用を速やかに改め、調停委員任命に際し外国籍の者を排除しないことを求める。

以 上

2018年(平成30年)3月1日
沖縄弁護士会       
会 長  照 屋 兼 一

 

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