決議・声明

 共謀罪を創設する組織犯罪処罰法の改正に反対する会長声明

 
過去に国会で三度廃案になったいわゆる共謀罪法案が,「テロ等準備罪」とその名前を変え,政府により組織犯罪処罰法の改正案として国会に提出される予定であることが報道されている。
当会は過去三度にわたり,共謀罪法案に反対する声明を発表してきた。
本年3月21日付で閣議決定された法案は,テロ組織や暴力団、薬物密売組織や振り込め詐欺集団を対象としているとしつつも、共謀罪の主体を「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」とし、何ら限定していないことから,市民団体などを含むあらゆる集団が,捜査機関によって「その他の組織的犯罪集団」と認定され,捜査の対象となる可能性があり,憲法で保障された正当な結社の自由,表現の自由その他国民の基本的人権が侵害される危険性が高い。
また,共謀を処罰するという法案の性質上,その捜査には盗聴のような方法が用いられることが容易に推測され,国民のプライバシーが侵害される危険性もある。
また,何が犯罪になるのかが明確でないという問題点も,未だ解決されたとは言えない。法案では,一定の例示のあと「その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為」を行うことが罪とされるが,何がこの準備行為に当たるのかは明らかでない。このような曖昧な構成要件を犯罪とすることは,刑罰法規の明確性(憲法31条)に反するとともに,国民の基本的人権の行使に大きな萎縮効果をもたらすものである。
 そもそも,日本国では,既に刑法をはじめとする個別の法律により,組織的な犯罪集団による重大な犯罪について,例外的に予備罪・陰謀罪が定められており,テロ行為等については未遂に至らない予備・陰謀の段階で処罰することも可能であるなどテロ対策も既に取られており,組織犯罪処罰法の改正を行って共謀罪を一般化する必要はない。
また,政府は,テロ組織による国際犯罪に対応するため,「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(国連越境組織犯罪防止条約)」を批准する必要があり,そのためにも「共謀罪」を創設しなければならないと説明するが,同条約は,締結国はそれぞれ国内法の基本原則に基づく立法上・行政上の措置をとればよいと定めるにすぎず,未遂前の段階での対処を可能とすることが求められているにすぎない。そして,上述のように,既に一定の重大犯罪について未遂前の段階で取り締まることができる予備罪・陰謀罪が定められているのであるから,すでに組織犯罪を有効に抑止する法体制はできており,本法案を成立させなくても,上記条約の批准をすることは可能である。
 以上のとおり,本法案は,これまでの共謀罪の本質的な危険性を残したままであり,その問題点を克服したものとなっておらず,極めて問題のある法案である。
よって,当会は,共謀罪を創設する組織犯罪処罰法の改正案に反対する。
 
2017(平成29)年3月22日
            沖縄弁護士会
            会 長 池 田   修

 

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