決議・声明

いわゆる共謀罪の創設に反対する会長声明

いわゆる共謀罪法案は,過去に国会で三度廃案になっているが,政府が来年の通常国会に「共謀罪」を「テロ等組織犯罪準備罪」と名称を改めたうえでこれを含む法案を提出する方針であるとの報道がなされている。

沖縄弁護士会では,従前政府から提案されてきた共謀罪法案に対して,2005(平成17)年及び2006(平成18)年の2回にわたり,共謀罪法案の問題点を指摘して,これに反対する声明を発表してきた。

政府は,過去に共謀罪法案が三度に渡って廃案になったことを踏まえ,今回の法案ではいくつかの修正を加えている。しかし,現在報道されている新法案によっても,未だ下記の問題点が残されている。

第一に,過去の案では適用対象を単に「団体」としていたが,新法案では「組織的犯罪集団」とし,また,その定義について,「目的が4年以上の懲役・禁錮の刑が定められている罪を実行することにある団体」とした。しかし,いかなる団体が「組織的犯罪集団」であるのかは明確に定義されておらず,権力者による恣意的な法運用の余地が残されている。

第二に,過去の案では「共謀」のみによって処罰することにしていたところ,新法案では,犯罪の「遂行を二人以上で計画した者」を処罰することとし,その処罰に当たっては,計画をした誰かが,「犯罪の実行のための資金又は物品の取得その他の準備行為が行われたとき」という要件を付した。しかし,何をもって「計画」と単なる雑談等とを区別するのかという基準は明確になっていない。また,わが国の刑法体系においては法益の侵害に対する危険性がある行為を処罰するのが原則であり,犯罪の未遂や予備行為ですら,その処罰は例外的なものとされている。この例外的な予備罪・準備罪における予備・準備行為より前の段階の,未だ危険性の乏しい行為まで「準備行為」として幅広く含まれる可能性があり,その適用範囲が十分に限定されたとは言えない。

第三に,そもそもテロ対策を理由として立法がなされようとしているところ,適用対象犯罪を単に「4年以上の懲役・禁錮の刑が定められている罪」と形式的に定めた結果,過去の法案同様その対象犯罪数は600を超え,テロ犯罪・組織犯罪との結びつきが必然的でない一般犯罪についてまで対象とされてしまっている。ここに至るまでには現に対象犯罪を約140から約200にまで絞り込んだ案も存在したところ,上記のように形式的に適用対象を定めたことは,人権に対する配慮を欠き,あまりに杜撰であるといわざるをえない。

第四に,いかに犯罪の構成要件を限定しようとも,「計画」が存在することを構成要件とするのであるから,その捜査を行うために,通信傍受の範囲拡大や室内盗聴という捜査手法が導入されることになり,一般人のプライバシー保護の観点からも大きな問題がある。

 第五に,そもそも政府は,テロ組織による国際犯罪に対応するため,「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(国連越境組織犯罪防止条約)」を批准する必要があり,そのためにも「共謀罪」を創設しなければならないと説明してきた。しかし,同条約は,締結国はそれぞれ国内法の基本原則に基づく立法上・行政上の措置をとればよいことを定めており,締結国に組織犯罪対策のために未遂以前の段階での対応を可能とする立法措置を求めているに過ぎない。そして,わが国では,既に現行法上刑法をはじめとする個別の法律により,組織的な犯罪集団による犯行が予想される重大な主要犯罪については,例外的に予備罪・陰謀罪が定められており,テロ行為等に関して未遂に至らない予備・陰謀の段階での犯罪を処罰することも可能となっている。したがって,政府が説明するように,同条約を批准するためにいわゆる「共謀罪」を創設する必要性は全くない。

 そのうえ、国連越境組織犯罪防止条約は、経済目的の組織犯罪を適用対象としており、宗教的・政治的目的のテロ対策は目的となっておらず、いわゆる「共謀罪」法案をテロ対策として提案することにはそもそも理由がない。

以上のとおり,新法案は,これまでの批判を受けて四度目にしてようやく多少の修正がなされているものの,未だその処罰範囲は広範かつ不明確であるという問題点が残されており,それ以外の問題点も是正されていない。更に,そもそも政府の説明する創設の必要性も全くない。

よって,当会は,いわゆる「共謀罪」法案創設に強く反対する。

2016(平成28)年9月20日

                       沖縄弁護士会

                       会 長 池 田   修

 

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