原発事故避難者への住宅支援の継続等を求める会長声明
2016年(平成28年)8月29日
沖縄弁護士会
会 長 池 田 修
〈声明の趣旨〉
福島第一原子力発電所事故による,避難指示区域以外からの避難者が居住する沖縄県内の自治体は,国及び福島県が住宅支援を打ち切るとしている2017年(平成29年)4月以降も,避難者の状況に配慮し,原発事故による被災者が避難を選択する権利を有することを認め、避難者に対する抜本的・継続的な住宅支援制度を確立するため、速やかに以下の対応をとることを求める。
1 原発事故避難者向けの民間賃貸住宅や公営住宅などの無償住宅支援の延長等を行い,現在の入居者に対して2016年(平成28年)度末での退去を迫らないこと。
2 独自の賃料補助制度を策定するとともに,公営住宅の募集において優先枠を設置するなどして住まいの確保を支援すること。
3 他の物件への転居を希望する避難者が,県内に連帯保証人がいないことを理由に転居できないという事態が生じないよう必要な措置を講じること。
〈声明の理由〉
福島県は,2015年(平成27年)6月15目,避難指示区域以外からの避難者(いわゆる自主避難者)に対する災害救助法に基づく住宅支援を,2017年(平成29年)3月に打ち切るとした。その際,福島県は,従前の住宅支援策に代え,新たな支援策として民間賃貸住宅家賃への支援(避難者に対する帰還・生活再建に向けた総合的な支援策)等を打ち出した。かかる方針変更は,福島県と国が協議をし,国の同意のもと行われたものである。
しかしながら,かかる支援策は,適用対象が狭く,補助率も低く,期間もわずか2年間でしかないという不十分な内容であるため,沖縄県内の避難者の多くは今後の生活への不安を訴えつつ,当地での避難の継続を希望している。
原子力災害の特性に鑑みれば放射性物質の影響から長期にわたって避難する選択は合理的である。住宅への支援策は避難者の生活の最も重要な基盤を保障するものとして,憲法はもとより「原発事故子ども・被災者支援法」によって十分な対応がなされるべきである。
既に,他県では各県の避難者の置かれた状況及び避難者が居住する住宅の種類に即して独自支援施策が講じられてきている。具体的には,鳥取県は2019年(平成31年3月)までの住宅無償支援継続を打ち出し,新潟県は福島県の支援策に上乗せする形で家賃補助の加算を打ち出し,東京都及び埼玉県は公営住宅の専用枠の設定や優先入居の措置を行っている。
福島県から沖縄県に避難している避難者の数は,把握されているだけでも438人(平成28年6月時点)にのぼるところ,この数は九州で最も多く,兵庫県以西で最大である。さらに他県に比べ,避難者のうち避難指示区域以外からの避難者の割合が高いと言われている沖縄県の状況に照らせば,独自の施策を講じる必要性は他県より高い。
また,この打ち切りに際し,沖縄県内の他の物件への転居を希望する避難者の増加が見込まれるところ,地縁血縁のなさから県内には連帯保証人を用意することができず,転居を円滑に進められない恐れがある。そこで,民間団体等と協議を行い連携して,県内の連帯保証人は不要とする等必要な措置を講じるべきである。
以上の次第であるから,避難者の状況等に配慮しつつ,速やかに声明の趣旨記載の対応をとるよう求める。
以 上