死刑執行に抗議する会長声明
本年12月18日,東京拘置所及び仙台拘置支所において各1名に対して死刑が執行された。東京拘置所の事例は,裁判員裁判による死刑確定事件として初めて執行されたものである。
日本弁護士連合会は,同月9日,岩城法務大臣に対し,「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し,死刑の執行を停止するとともに,死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出して,死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し,世界の情勢等について調査するなどし,死刑制度の在り方について結論を出すこと,そのような議論の間,死刑の執行を停止すること等を求めていた。このような中での死刑執行は極めて遺憾である。
昨年3月,静岡地方裁判所は,袴田巖氏の第二次再審請求事件について,再審を開始し,死刑及び拘置の執行を停止する決定をした。もし死刑の執行がなされていたならば,まさに取り返しのつかない事態となっていた。袴田事件は,えん罪の恐ろしさはもちろんのこと,死刑制度の問題点を浮き彫りにしている。
死刑の廃止は国際的な趨勢であり,世界で死刑を廃止又は停止している国は140か国に上っている。昨年に実際に死刑を執行した国は日本を含めわずか22か国であった。また,OECD加盟国の中で死刑制度を存置している国は,日本・韓国・米国の3か国のみであるが,韓国は17年以上にわたって死刑の執行を停止,米国の19州は死刑を廃止しており,死刑を国家として統一して執行しているのは日本のみである。こうした状況の中で,国際人権(自由権)規約委員会は,昨年,日本政府に対し,死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告している。
また,昨年11月に実施された政府世論調査の結果,回答者のうち37.7%が仮釈放のない終身刑が導入されるならば「死刑を廃止する方がよい」と回答している。巷で言われているように,世論の大半が死刑制度を支持しているなどとは言えない数字である。
死刑制度を巡るこのような国際的・国内的動向を踏まえ,当会は,今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに,死刑執行を停止し,死刑に関する情報を広く国民に公開し,死刑制度の廃止についての全社会的議論を求めるものである。
2015年(平成27年)12月24日
沖縄弁護士会
会長 阿波連 光