安全保障関連法案の強行採決に抗議する声明
2015年(平成27年)7月15日、与党は、衆議院安保法制特別委員会において安全保障関連法案(安保関連法案)を強行採決し、さらに、同月16日、衆議院本会議においても同法案を強行採決した。
当会は、本年5月27日の定期総会にて、「集団的自衛権行使を可能とする安全保障法制に反対する総会決議」をあげ、国会に対し、安保関連法案を廃案にするよう求めていたものであり、この度の衆議院における採決の暴挙に対し、強く抗議する。
政府は、安倍内閣の閣議決定による解釈変更に至るまで、長年にわたり、一貫して憲法9条のもとで個別的自衛権の行使を超える武力行使は憲法に違反するとの解釈をなしてきた。憲法学界においても、自衛隊の合憲性についての議論はあるものの、日本国憲法のもとで個別的自衛権行使以外の武力行使ができるとの合理的な解釈が示されたことはなく、違憲であることはおおむね共通の見解となっている。
これに対して、安保関連法案は、まず、「存立危機事態」という極めて曖昧な要件のもとに、わが国が現実に攻撃されていないにもかかわらず自衛権の行使を容認するもので、濫用の恐れがあるのはもちろんのこと、これまでの個別的自衛権の行使とはまったく異質の武力行使に踏み込むものである。また、「重要影響事態」や「国際平和共同対処事態」として外国軍隊の戦闘行為の後方支援を行ったり、国連PKOや「国際連携平和安全活動」として紛争地域での治安維持活動で武器使用を広く容認することは、これまでわが国が長年にわたって築き上げてきた平和主義に対する他国の信頼をむしろ損ねることになるものである。
ところが、国会審議では、これの安保関連法案が合憲であることについての説得的・合理的な説明は見受けられなかったのであり、米軍の日本駐留が問われたに過ぎない砂川事件最高裁判決を合憲の根拠と説明するに至っては、憲法学において積み重ねられてきた議論を愚弄するものというほかない。安保関連法案に対する国民の理解が広がらないのは当然の帰結である。
安保関連法案が想定しているいずれの活動も、憲法の恒久平和主義(9条、前文)に違反するものであり、さらに、かかる法案を政府と国会のみで成立させることは、立憲主義の根本原則に違反し、日本の民主主義を危殆に陥らせるものであって、深刻な懸念を表明せざるを得ない。
安保関連法案によって、戦後70年目のわが国は平和の岐路に立たされている。今からでも遅くはない。国会にあっては、良識を発揮し、安保関連法案を廃案とするよう強く求めるものである。
2015年(平成27年)7月16日
沖 縄 弁 護 士 会
会 長 阿 波 連 光