「商品先物取引法施行規則の一部を改正する省令」に反対する会長声明
経済産業省及び農林水産省は、2015(平成27)年1月23日、商品先物取引法施行規則の一部を改正する省令(以下「本省令」という)を定めた(施行は本年6月1日)。
本省令は、ハイリスク取引の未経験者について、65歳未満でかつ年金等生活者以外の者で、年収800万円以上若しくは金融資産2000万円以上を有する者に対しては、取引のリスク(損失額が拠出額を上回る可能性があること等)を顧客が理解していることを契約前にテスト方式により確認すること、熟慮期間を14日設けることなどを条件に、不招請勧誘規制の例外を定めるものである。
「不招請勧誘」とは、顧客の要請を受けずに行われる訪問・電話勧誘を指す。商品先物取引においては、それまでハイリスクな投機取引に全く関心を持たなかった一般市民が、ある日突然掛かってきた勧誘の電話に端を発し、深刻な被害に遭うという事案が後を絶たないという経緯に鑑み、商品先物取引法の2009(平成21)年7月改正により、不招請勧誘の禁止規定が導入された。
今般、経済産業省及び農林水産省は、上記のような不招請勧誘禁止の経緯を顧みることなく、市場の活性化という観点からこれを一部解禁する省令の改正を行った。
法が規制する勧誘は、本来、契約締結の勧誘をする目的で行う一切の行為を意味するところ、本省令により、業者は勧誘を招請していない顧客に対し、訪問・架電して、年齢・収入・資産要件を確認し、取引の理解度をテスト方式で確認することになる。しかし、これらは契約締結の勧誘と一体でなされることは明らかであるから、本省令は、不招請勧誘を実質的に解禁するに等しい。
また、契約前に行われる顧客の理解度を確認するテストは、現在でも行われているが、業者が正答を教示するなどの不正が行われていることが裁判例でも多数認められており、委託者保護として機能しないことは明らかである。
以上より、本省令は不招請勧誘を禁止した法律の趣旨を逸脱したものであり違法である。
商品先物取引は、各商品の国内外の需要と供給の動向、社会・経済情勢、天候、為替相場等の複雑な要素により価格が決まるものであり、専門的知識を要しハイリスクを伴う取引である。そのような取引は、高度な知識・経験を有するプロが参加する市場で行われるべきものであり、そもそも参加を自ら望んでいなかった一般市民の保有財産により市場の活性化を図るべきではない。
以上より、本省令はその施行日前に廃止されるべきである。
2015(平成27)年5月1日
沖縄弁護士会
会 長 阿波連 光