特定秘密の保護に関する法律の施行に抗議し、同法の速やかな廃止を求める声明
1. 2014(平成26)年12月10日、特定秘密の保護に関する法律(特定秘密保護法)が、施行された。
2. 当会は、2012(平成24)年5月30日に当会定期総会で決議された「秘密保全法制に反対する総会決議」及び2013(平成25)年11月19日に公表した「特定秘密保護法案に反対する会長声明」などにおいて、本法律が、国民の知る権利等の基本的人権を侵害するとともに、民主主義を軽視し、憲法上の原理をないがしろにするものであることを、繰り返し明らかにしてきた。
すなわち、本法律には、以下の看過できない問題点が存する。
①行政機関の長が指定する「特定秘密」の範囲がその法文上、広範、不明確であり、その結果、国民が国政に関する重要な情報から遠ざけられることになりかねず国民主権原理が形骸化する。
②「特定秘密」の漏えい行為や「特定秘密」の取得行為のみならず、これらの未遂や共謀、独立教唆又は扇動をも処罰するなど処罰範囲が極めて広範である。このため、国政に関する情報について国民がアクセスすることや公務員がこれを外部に発する行為を萎縮させる可能性が大きく、また報道機関による取材行為を刑罰によって萎縮させ、取材の自由・報道の自由を実質的に失わせる。ひいては民主主義の前提である国民の知る権利を侵害する。
③「適性評価」の名のもと「特定秘密」の取扱をする公務員や民間労働者に対する身辺調査を行うとされ、プライバシー権侵害のおそれ、ひいては個人の政治活動や思想信条にまで踏み込む調査がなされる危険性さえはらんでいる。
なお、昨年10月、政府は、本法律の施行令や運用基準を閣議決定したが、これらによっても上記に述べた問題点は何ら是正されていない。そもそも、こうした小手先の運用では、上記のような本法律の持つ本質的な危険性を払拭することは出来ないのである。
3. 本法律に反対する国民の声は、本法律案審議中の世論調査や、全国的に展開された大規模なデモ行進や街頭行動、国会議員への要請行動などとして現れていたところである。さらには、本法律成立後も、廃止や凍結を求める市町村議会決議が全国で相次ぎ、沖縄県においても、9町村議会がかかる決議を行っている。
4. 以上のような本法律の重大な問題点や国民の強い反対の声にもかかわらず、本法律が施行されたことに対し、当会は強く抗議する。
5. 本法律は、先に述べたその性質上、国民の気付かないところで憲法の国民主権原理や表現の自由等の基本的人権を徐々に蝕み、回復不能な侵害が生じる危険性をはらむものである。当会は、今後も、本法律の危険性を訴え続け、本法律の廃止を求める。
2015(平成27)年1月6日
沖縄弁護士会
会長 島袋秀勝