那覇空港滑走路増設事業の事業計画内容の再検証を改めて求める会長声明
1 沖縄弁護士会は、2013年4月25日、国及び沖縄県に対して、那覇空港滑走路増設事業(以下「本件事業」という。)について、環境保全の見地から事業計画の内容を再検証すべきである旨の意見書を発表した。
2 その後、国は2013年6月、本件事業に係る環境影響評価書(以下「評価書」という。)を作成し、同月26日、沖縄県知事等に送付した。評価書は、同年9月20日、公告され、縦覧に供されている。
また、国は、2013年9月20日、公有水面埋立承認申請書を沖縄県知事等に提出しており、国は、本件事業につき、2014年1月に着工し、工期は当初の7年の計画を5年10か月に短縮、2020年3月末に供用開始する旨を予定している。国土交通省は、公有水面埋立ての審査、公告・縦覧の手続も短縮させ、早期の供用開始を実現するとしている。
3 上記の意見書は、本件事業予定地の自然環境が極めて貴重であること、本件事業がそのような自然環境に不可逆的影響を与えるものであること、事業主体から本件事業の合理性について十分な説明がなされていないこと等を理由に、事業計画内容の再検証を求めるものであったが、国及び沖縄県は、本件事業の早期着工を優先させて手続を進めており、事業計画内容の再検証はなされていない。
本件事業に関しては、県民・国民の間で十分な議論、合意形成がなされているとはいえず、日本自然保護協会も、2013年10月8日、評価書に対して生物多様性の保全の立場から環境保全措置等に関する意見書を発表している。このように、県民・国民の間で十分な議論、合意形成がないまま自然環境に重大な影響が生じる事業が実施されようとすることには問題がある。
また、国は、評価書の公告と同時に埋立承認申請をなし、縦覧手続も短縮するという異例の対応を取っているが、これでは評価書の公告・縦覧により広く県民・国民の議論を喚起するという環境影響評価法の本来の意義を損なう結果となる。このような対応は、県民・国民への十分な説明を省略して早期着工に固執するものとの批判を免れない。
当会は、国及び沖縄県に対し、環境保全の見地から本件事業の事業計画の再検証を行うことを改めて求める。
2013(平成25)年12月2日
沖 縄 弁 護 士 会
会 長 當 真 良 明