決議・声明

改正貸金業法完全施行後2年を迎えての会長声明

 

 2006年(平成18年)12月に改正貸金業法(以下「改正法」という)が成立し,その後2010年(平成22年)6月18日に改正法が完全施行されてから2年が経過した。改正法前,多重債務問題は深刻な社会問題となっており,その原因である高金利,過剰融資,過酷な取立てに対する抜本的な改革が求められていた。
 当会も,2006年(平成18年)5月31日に「出資法上限金利を利息制限法の制限金利まで引き下げること等を求める決議」を行い,多重債務に関する無料相談体制を拡充し,地方自治体等の相談機関との連携を強化するなど,多重債務者の救済,ヤミ金融被害の救済等に向けて総力を挙げた活動を行ってきた。
 そして,改正法施行後,5社以上の借入れを有する多重債務者が約230万人から約44万人に,自己破産者が約17万人から約10万人に,多重債務による自殺者が半減するなど,改正法施行の成果はめざましいものがあるというべきである。
 ところが,今般,与野党の国会議員の間で,総量規制の実施等により融資を受けられなくなった者がヤミ金融から借りざるを得ず潜在的なヤミ金融被害が増えている,零細な中小企業の臨時資金需要に応え切れていない,などとして,改正法の中核である金利規制や総量規制の見直しの議論が起きている。
 しかし,日本の社会が二極化し,貧困層が拡大していることに鑑みても,改正法の規制のもとで借りられない人に対しては,簡単に借りられるようにするのではなく,「高利に頼らなくても生活できる」セーフティネットの再構築や相談体制の更なる充実が重要である。
 また,ヤミ金融被害が増えていることを示す具体的事実は存在せず,現時点で法規制を緩和する必要はないというべきである。ヤミ金融規制については,2008年(平成20年)10月から施行された犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律による口座利用規制が大きな成果を上げたことからわかるように,金利の引き上げではなく,取り締まりの徹底化によって根絶していくべきである。
 さらに,中小企業に対しては,国は緊急保証,セーフティネット貸付及び中小企業等に対する金融円滑化対策を実施し,地域金融機関等による支援策を行わせている。また,貸金業者による個人零細事業者への総量規制の例外貸付も一定の実績を有している。
 金利規制や総量規制見直しの動きは,改正法によりこの2年間で得られためざましい成果を,推測の域を出ない根拠により否定しようとするものであり,疑問と言わざるを得ない。
 当会は,改正貸金業法完全施行の成果を無にしかねない,金利規制・総量規制の緩和に強く反対するとともに,今後も多重債務者の救済等に積極的に取り組んでいくことを表明する。

 

 2012(平成24)年8月6日 
沖縄弁護士会 会長 加藤 裕

 

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