決議・声明

司法修習生の給費制復活を求める会長声明

 

 本日、裁判所法等の改正案が可決、成立した。この改正法は、①修習資金の貸与については、司法修習生に対する適切な経済的支援を行う観点から検討が行われるべきであるとし、②政府は、法曹の養成に関する制度について新たに設置する機関での意見等を踏まえつつ、一年以内に検討を加える、というものである。また、今回の裁判所法等改正にあたって、衆議院法務委員会において附帯決議がなされており、そこでは、「我が国の司法を支える法曹の使命の重要性や公共性に鑑み、高度の専門的能力と職業倫理を備えた法曹を養成するために、法曹に多様かつ有為な人材を確保するという観点から、法曹を目指す者の経済的・時間的な負担を十分考慮し、経済的な事情によって法曹への道を断念する事態を招くことがないようにすること」とされている。
 このような改正や附帯決議がなされた背景には、ここ数年、法曹志望者が激減しているという事態があるが、昨年から導入された司法修習生に対する修習資金の貸与制も、その一つの要因になっていると考えられる。経済的余裕のない者にとっては、法科大学院を修了したうえでさらに無給で司法修習を経ることはあまりにも過大な負担となるからである。
 法曹志望者の減少は、国民に重大な悪影響を及ぼすおそれがある問題といわねばならない。司法は国民の権利や利益を守る役割を担っているが、その司法を支えるのが裁判官、検察官、弁護士といった法曹であり、法曹には高度の専門的能力と職業倫理が要求される(前記附帯決議参照)。そのため、法曹に多様かつ有為な人材を確保する必要があるところ、その志望者の減少は、法曹にかかる人材を確保することができなくなっていくことを意味するからである。
 司法修習制度は、実務法曹としての能力と倫理を修得するための不可欠の制度であり、その充実は国の責任である。そして、経済的事情にかかわらずかかる修習を受けられることこそ多様で有為な人材の確保のため必須である。
 当会は、これまで、2004年6月の「司法修習生の給費制堅持を求める会長声明」、2009年5月の「司法修習生の給費制の維持を求める決議」、2011年1月の「司法修習生に対する給費制を1年間延長する『裁判所法の一部を改正する法律』の成立にあたっての会長声明」等により、給費制の維持を強く求めてきた。このような求めにもかかわらず、貸与制が実施され、問題が深刻化していることは誠に遺憾である。
 本改正法は給費制の採用を排除する趣旨ではなく、過去にさかのぼって公平、平等な支援を検討することも当然含まれている課題である、とされている(2012年〔平成24年〕6月8日衆議院法務委員会)。当会は、政府に対し、法曹養成制度の改善の一環として、司法修習生の給費制の復活を強く求めるものである。
 

2012年(平成24年)7月27日
                     沖縄弁護士会 会長 加藤 裕

 

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