決議・声明

普天間飛行場代替施設建設事業にかかる
環境影響評価手続のやり直しを求める会長声明
 
1 沖縄防衛局は、2011年(平成23年)12月、普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書(以下「本件評価書」という。)を、沖縄県に提出した。
  当会は、沖縄防衛局が2007年(平成19年)8月に公告縦覧した上記事業に係る環境影響評価方法書について、これが審査するに足りない不十分な内容であることに加え、沖縄防衛局が方法書手続終了前から環境現況調査を行ったことは、環境影響評価法が定める手続を形骸化し、法の趣旨を没却するものであるとして、2008年(平成20年)1月28日、方法書を撤回し、手続きをやり直すべきであるとの会長声明を発した。
  さらに、当会は、沖縄防衛局が2009年(平成21年)4月に上記事業に係る環境影響評価準備書を公告・縦覧した際には、方法書に対する当会会長声明やその他環境団体等からの意見表明を無視して準備書作成に至ったことについて遺憾の意を表明するとともに、準備書作成後も環境現況追加調査の名の下に調査が継続されている問題などを指摘して、沖縄防衛局に対し、方法書を作成し直して公告縦覧手続から再度実施すること及び不適切な調査によって生じた環境改変の影響がなくなるのを待って環境影響評価をやり直すことを求めて、同年6月、再度会長声明を発している。
  このように、これまでの手続きには内容の不十分さもさることながら、民主性をないがしろにしているという重大な問題があったが、それにもかかわらずこの度沖縄防衛局が評価書を提出したことは、極めて遺憾といわなければならない。
2 本件評価書については、内容面においても多岐にわたる問題点が存在するが、特に、評価書段階になってオスプレイの配備を明らかにしたことは、これまでの手続きに共通する重大な民主性の否定であり、極めて重大な問題であるといわなければならない。すなわち、市民には法令及び条例上、方法書及び準備書に対しては意見を述べる機会が与えられているが、評価書に対して意見を述べる機会は保障されていない。この点、オスプレイは、騒音域、飛行経路、環境に対する負荷等、普天間基地において現に使用されている航空機等とは全く異質な飛行機種である。評価書段階になってオスプレイの配備を明らかにするという沖縄防衛局の「後出し行為」によって、市民は、実質的な意見を表明する機会を奪われたのである。
  オスプレイについては、当初から配備が予定されていたにもかかわらず、ここにきて初めて配備に言及したという事情に鑑みれば、同機種の配備を前提とする環境アセスメントを当初から実施することで、甚大な被害を発生させる恐れが明らかになることを隠蔽するため、これまで意図的にその配備予定を秘匿してきたのではないかとの疑念を抱かざるを得ないところであり、仮にこれが事実であれば、かかる行為が環境アセスメント手続の明白な潜脱であり、不当極まりないものである。
  加えて、ジュゴンに関する記述部分においても本件準備書の作成後に行われた環境現況追加調査の結果が引用されており、ここでも民主性は軽視されている。
3 いうまでもなく、環境影響評価手続の要は、民主性と科学性の確保にある。
 沖縄防衛局による上記一連の手続きは、市民参加による環境保全のための合意形成という環境影響評価の本質を損ない、その結果、科学的にも多くの批判がなされる結果となっている。
 以上のことから、法令や条例の趣旨を全うすべく、当会は改めて沖縄防衛局に対し、方法書を作成し直して公告縦覧手続から再度実施すること及び不適切な調査によって生じた環境改変の影響がなくなるのを待って環境影響評価をやり直すことを求めるものである。
 
2012年(平成24年)3月1日
沖縄弁護士会会長 大 城 純 市

 

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