沖縄防衛局長による有権者リストの作成及び
講話問題に関する会長声明
沖縄県宜野湾市に所在する米軍普天間飛行場の移設問題が争点の一つとなっている宜野湾市長選挙(2月5日告示,12日投開票)を前に,本年1月4日,沖縄防衛局真部朗局長は,部内電子メールにより,各部庶務担当に対して,宜野湾市在住の職員及び同市において選挙権を有する親族をもつ職員のリストを作成し,その報告を指示するとともに,続く同年1月18日付の電子メールでは,把握した職員を「聴講者リスト」にまとめたうえで,かかる職員らにおいて,1月23日(月)及び24日(火)の両日,局長講話を必ず聴講させるよう,職員に通知をした。
その上で同局長は,実際に両日にわたって講話を実施し,宜野湾市長選挙に立候補している2人の政策を説明して,選挙権行使の重要性等を説くなどしている。
まず,沖縄防衛局により上記リストが作成されたことについては,同リストが沖縄防衛局の職務とは何ら関係のないものであることから,これに民間人である職員の親族の個人情報が含まれていたのであれば,かかる行為は,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律第3条1項(保有の制限)に抵触する違法な行為である。
また,同局長が,上記講話において,防衛省の重要政策課題である普天間基地代替施設建設の実施の重要性を説明し,その上で各予定候補者の具体的政策を説明して職員及びその親族に投票行為を推奨したことは,局長であるその地位を利用して,職員らに対し暗に防衛省の政策に親和的な特定の候補者への投票を呼びかけたものと受け止められかねないものであるため,公職選挙法第136条の2で禁止されている地位利用による選挙運動との疑いを受けるものである。
さらに,同局長による一連の行為は,これが職務中に行われ,且つその政治的目的を疑われてもやむを得ないものであったことから,自衛隊法第61条の禁止する防衛省職員の政治的行為に該当する可能性も否定することが出来ない。自衛隊法が防衛省職員に一般の国家公務員より厳しい政治的中立性を求めた趣旨は,実力組織の政治介入がときに取り返しのつかない事態を招きかねないためであって,かかる法の趣旨に照らしてみたとき,同局長がその立場を利用して職員に対し上記講話を行った本件事件の問題性は,民主主義の観点からも,断じて看過することが出来ないものである。
そこで当会は,国会及び内閣において,今回の事実関係について徹底的な調査を行った上で,防衛省ないし沖縄防衛局による本件のような行為が再発しないよう,断固たる対策を講じることを求めるものである。
2012年(平成24年)2月14日
沖縄弁護士会
会 長 大 城 純 市