決議・声明

全面的国選付添人制度の実現を求める会長声明

 
 
1 付添人の役割
弁護士付添人は、少年審判事件において、非行事実の認定や保護処分の必要性の判断が適正に行われるよう、少年に対し法的援助を行っている。
付添人の活動内容は、非行事実の争い、少年への働きかけ、少年の学校や職場といった環境調整、保護者との関係の調整、被害者への被害弁償・示談、身体拘束の回避・解放、身体拘束時の外部との連絡など多岐にわたっている。
このような弁護士付添人の多様な役割に鑑みれば、少年審判事件においても、少なくとも成人の刑事手続と同レベルの弁護士によるサポートが必要であることは論を待たない。
 
2 少年と成人の比較
ところが、少年審判事件は、刑事訴訟手続とは趣旨・目的を異にし、全体として少年の保護のための手続としての性格を有するため、少年の権利保護等について刑事訴訟手続と同列の議論はできないという一部の意見や弁護士付添人の関与が検察官の関与とセットで考えられてきた少年法改正の経緯等から、少年に対する法的援助は、成人に比べて極めて不十分な状態にあるのが現状である。
具体的には、成人の刑事手続において弁護人選任率が約98.7%であるのに比べ、弁護士付添人の選任率は、少年鑑別所に収容された少年の約40%、少年審判を受ける少年全体の約8.5%にとどまっている(2008年の全国統計)。
しかしながら、少年審判事件の趣旨・目的が、刑事訴訟手続と異なるからといって、法的援助が不要になる理由にはならず、それどころか、少年審判事件においては、上述のとおり、付添人の役割は多岐にわたり、法的援助の必要性は高い。少年は、成人に比較して、精神的に未熟であり取り調べ等に迎合しやすく成人よりも防御能力に劣るため冤罪に巻き込まれる危険性が高いという観点からも法的援助の必要性は高い。また、検察官の関与にかかわらず、事件によっては、少年院送致等の重大な不利益処分を受けるのであり、成人の刑事事件に比べて受ける不利益が決して軽微とは言えない。
 
3 現行制度の問題点
昨年5月から、被疑者国選弁護制度の対象事件がいわゆる必要的弁護事件に拡大されたことによって、成人の場合は、ほとんどの事件において、起訴前・起訴後を通じ、公的な法的援助が保障されることになった。ところが、少年の場合には、国選付添人対象事件の対象になるごく限られた事件以外には、家庭裁判所送致後の公的な法的援助が保障されていない。そのため、捜査段階では国選弁護人から法的援助を受けることができた少年が、家裁送致後には国選付添人から法的援助を受けることができない(いわゆるおきざり問題)という制度矛盾も生じている。本来、少年は、成人以上に資力がないのであるから、成人よりも手厚い公的援助が必要となるにもかかわらず、現行制度は逆転しているのである。
 
4 弁護士会の取り組み
このような状況下において、日弁連は、会員の特別会費による少年保護事件付添援助制度を設け、国選付添人制度の対象となっていない少年事件において弁護士付添人の費用を援助してきた。被疑者国選制度が開始された今日においては,上記のおきざり問題が生じないように援助制度を利用することで対応してきた。
また,本年7月より、少年の権利保護の観点から,従前の当番付添人制度を拡充し、いわゆる全件付添人制度を本島において実施を開始した。従前付添人の確保が困難であった石垣、宮古の離島においても近年の弁護士数の増加により付添人確保の目途がたち、近日中に全件付添人制度が実施される見込みである。
 
5 国の責務
しかしながら、本来、少年に対して、適正な手続を保障し、弁護士付添人による法的援助を確保するための制度設計は、国の責務である。少子化の進む昨今においては、このような公的な法的援助は、一人でも多くの子どもが更正し、社会に復帰できるように援助するという点でその重要性は増している。
よって、当会は、国に対し、国選付添人制度の対象事件を、少なくとも少年鑑別所に収容された全ての少年事件にまで拡大するよう少年法の改正を求める。 
 
 
 
平成22年(2010年)8月10日
沖縄弁護士会       
会 長  宮 國 英 男

 

ファイルのダウンロードはコチラ
PDF

 

前のページへ戻る