改正貸金業法の早期完全施行等を求める会長声明
経済・生活苦での自殺者が年間7000人に達し、自己破産者も18万人を超え、多重債務者が200万人を超えるなどの深刻な多重債務問題を解決するため、2006年12月に改正貸金業法が成立し、出資方の上限金利の引き下げ、収入の3分の1を超える過剰貸付契約の禁止(総量規制)などを含む同法が完全施行される予定である。
改正貸金業法成立後、政府は多重債務者対策本部を設置し、同本部は①多重債務相談窓口の拡充、②ヤミ金融の撲滅、③金融経済教育等を柱とする多重債務問題改善プログラムを策定した。そして、官民が連携して多重債務対策に取り組んできた結果、多重債務者が大幅に減少し、2008年の自己破産者数も13万人を下回るなど、着実にその成果を上げつつある。
沖縄県においても、人口一人あたりの貸金業者数が全国1位、また、日賦貸金業者の登録数も全国1位であったこともあり、多重債務問題は、他県と比較して、特に深刻な問題であった。そこで、当会は、2007年11月、多重債務者の弁護士へのアクセスを容易にするため、多重債務者無料法律相談制度を立ち上げて多重債務者相談の窓口を拡大するといった多重債務問題に取り組み、一定の成果を上げてきた。
他方、一部には、消費者金融の成約率が低下しており、借りたい人が借りられなくなっている、特に昨今の経済危機や一部商工ローン業者の倒産などにより、資金調達が制限された中小起業者の倒産が増加しているなどを殊更強調して、改正貸金業法の完全施行の延期や貸金業者に対する規制の緩和を求める論調がある。
しかしながら、1990年代における山一証券、北海道拓殖銀行の破綻などに象徴される、いわゆるバブル崩壊後の経済危機の際は、貸金業者に対する不十分な規制の下に商工ローンや消費者金融が大幅に貸付を伸ばし、その結果、1998年には自殺者が3万人を超え、自己破産者も10万人を突破するなど多重債務問題が深刻化した。
改正貸金業法の完全施行の先延ばし、金利規制などの貸金業者に対する規制の緩和は、再び自殺者や自己破産者、多重債務者の急増を招きかねず許されるべきではない。多重債務対策が着実に成果を上げつつあるとはいえ、今もなお、多重債務に苦しむ者は存在する。そのために必要とされる施策は、相談体制の拡充及びヤミ金融の撲滅などである。
そこで、今般設置される消費者庁の所管乃至共管となる地方消費者行政の充実及び多重債務問題が喫緊の課題であることもふまえ、当会は国に対し、以下の施策を求める。
1 改正貸金業法を早期(遅くとも本年12月まで)に完全施行すること
2 自治体での多重債務相談体制の整備のため相談員の人件費を含む予算を十分確保するなど相談窓口の充実を支援すること
3 ヤミ金融を徹底的に摘発すること
2009(平成21)年10月27日
沖縄弁護士会
会 長 玉 城 辰 彦