泡瀬干潟埋立事業に対する福岡高等裁判所那覇支部判決に関する会長声明
1 福岡高等裁判所那覇支部は,2009年10月15日,泡瀬干潟を埋め立て,人工島を造成して埋立地を利用する国と沖縄県による中城湾港(泡瀬地区)公有水面埋立事業・臨海部土地造成事業及び沖縄市による沖縄市東部海浜開発事業(以下,あわせて「本件事業」という)に関し,沖縄県と沖縄市に対して将来の公金支出の差し止めを命じた那覇地方裁判所の判断を支持して,調査費を除く判決確定後の将来の一切の支出を差し止める判決をした。
2 当会は,2008年1月および2008年11月の2度にわたり会長声明において本件事業の見直しと工事の中止を求め,以下のことを指摘してきた。
泡瀬干潟は,南西諸島の中で最大級の(約265ヘクタール)の干潟であり,南西諸島の生物地理的特徴を示し,且つ,ラムサール条約登録湿地となるための国際的に重要な湿地の基準を満たしており,その保全は,沖縄県のみの課題にとどまるものではなく,日本が多様な湿地を保全する上で,またラムサール条約締約国としての責務を果たす上で,極めて重要な意義を有している。
他方で,本件事業計画の内容は,バブル期の残像を色濃く残し,その経済効果予測は到底現実的なものでなく経済的合理性が欠如するものである。
3 本件判決は,本件事業に経済的合理性が欠如するとした一審判決を支持し,沖縄県や沖縄市に対して公金の支出等を禁じたものであるところ,実質的に両事業の中止と見直しを求めるものであり,当会は高く評価する。
4 よって,当会は,沖縄県及び沖縄市に対して,判決に従い直ちに国と協議して本件事業を中止し,既に行われた工事によって破壊された自然を再生するために必要な措置を講じることを改めて強く求める。
2009年(平成21年)10月16日
沖縄弁護士会
会長 玉 城 辰 彦