決議・声明

生活保護の母子加算の復活を強く求める会長声明

 

厚生労働省は,本年4月,生活保護を受ける母子世帯に支給されてきた母子加算を完全に廃止した。

 

母子加算は、最低生活費に「上乗せ」されたものではなく,「健康で文化的な最低限度の生活」を実現するために必要不可欠なものであるとして、1949年から50年以上の長期間にわたって支給されてきたものである。母子加算の廃止は,現在、全国4地裁で12人の母子世帯の母親が原告となって争われている裁判で主張されているとおり,生活保護を受ける母子世帯の「最低限度の生活」保障を揺るがし,憲法上の生存権を侵害するものである。

 

母子加算廃止の論拠は、「母子加算を加えた生活保護費は、生活保護を受けていない一般母子世帯の消費生活水準を上回るので均衡を図る必要がある」というものである。しかしながら、諸外国とは異なり日本の母子世帯の84.5%は働いているが、年間の就労収入は171万円にすぎない。非正規労働などの仕事をかけもちして必死に働いても生活保護基準以下の収入しかない人たちが多くいるのである。このような人たちは、本来、生活保護を利用できるはずであるが、窓口に保護申請に行っても職員に違法に追い返される等して多くは、生活保護制度を利用できていない。生活保護の捕捉率(生活保護を受けられる人のうち実際に受けている人の割合)は高く見積もっても20パーセント台であるといわれている。このように違法な運用によって生活保護から遠ざけられている一般母子世帯を基準として、生活保護を受ける母子世帯の母子加算を切り捨てることは本末転倒であるといわざるをえない。

 

もとより、日本の母子世帯には、貧困が集中している。等価可処分所得の中央値の50%を貧困と定義したとき、全世帯の子ども貧困率が15%であるのに対し、母子世帯の子どもの貧困率は66%となっている。このような状況の下で、母子加算の廃止を容認しつづければ、貧困が集中している母子世帯に貧困を定着化させ,さらに貧困を悪化させる貧困スパイラルを生じさせる結果となる。また,母子世帯の子どもの将来に対する投資がさらに困難になることになり、母子世帯の子どもにも貧困を押しつけることにもなり,母子世帯の子どもへの貧困の連鎖を生じさせることになる。

 

母子加算の復活は生活保護受給率及び離婚率ともに全国一位である当県にとって極めて重要な意味をもつと考える。

 

当会は、このような重要な意味をもつ、生活保護を受ける母子世帯に対する母子加算の復活を強く求めるものである。

 

                                                                                         以 上

 

 

 

2009(平成21)年6月19日

 

沖縄弁護士会        

 

会 長  玉 城 辰 彦

 

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