米兵中学生暴行事件を報道するにあたって被害者の人権を侵害しないよう慎重な配慮を求める会長声明
本年2月10日,米兵による中学生暴行事件(以下「本事件」という。)が発生した。当会は,同月15日,この許し難い犯罪行為に対し厳重に抗議するとともに,米兵による重大犯罪を二度と起こさないための抜本的な対策を講じることを日米両政府に求める声明を出した。
ところで,過去に沖縄県内で発生した米兵による暴行事件の被害者に対し,一部マスメディアによるいわゆる二次被害があった。そこで,今般,当会は,本事件についても同様の事態が発生しないことを切に願い,各報道機関に対し,改めて被害者に関する報道について慎重な配慮を求めるものである。
もちろん,取材・報道の自由は,国民の知る権利の充足や民主主義の存立のためには必要不可欠な人権であり,最大限尊重されなければならない。しかし,これとて他者の人権を不当に侵害してはならないのであって,無配慮に被害者の居住地域で被害者について聞き込みを行ったり,被害者の特定を容易ならしめるような情報を安易に報道することは,被害者のプライバシー権や名誉権を不当に侵害することとなる。また,記事の中で必要以上に被害者の言動をあげつらうことは,本事件が未成年者に対するしかも性犯罪であることも考えると,被害者に耐え難い精神的苦痛をもたらし,その被害回復に重大な悪影響を与えかねない。このような報道がなされるとすれば,それは犯罪報道の在り方として疑問であると言わざるを得ない。
よって,当会は,各報道機関に対し,本事件の報道に際し,その取材方法及び報道内容について十分吟味し,くれぐれも被害者の人権侵害を引き起こすことのないよう慎重な配慮を求めるものである。
2008年(平成20年)2月27日
沖縄弁護士会
会 長 新 垣 剛