普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価方法書の撤回を求める会長声明
1 沖縄防衛局(旧那覇防衛施設局)は、2007年8月、普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価方法書(以下「本件方法書」という。)を沖縄県及び名護市に送付し、公告・縦覧した。
2 環境影響評価法は、事業者に方法書の作成を義務づけ、方法書に対する住民らからの意見に配慮し、また、地方公共団体の意見を勘案して、準備書を作成することを求めている。方法書は、「アセスの設計図」とも言われ、事業者が実際の調査、予測、評価を開始する前に、事業の概要と実施しようとする環境影響評価の内容を公開し、それについて住民・専門家・行政等の外部の意見を聴取することによって、環境影響評価の内容を絞り込む重要な手続である。
よって、方法書には、当該事業の実施に伴う環境への影響を適切に評価しうる環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評価の手法が選定されなければならない。また、環境影響評価法が方法書手続を導入した趣旨からは、調査は、方法書作成後、方法書に従って実施されるべきものである。
3 しかし、本件方法書では、事業計画の内容が十分に示されておらず、本件方法書において示された環境影響評価の項目及び手法が適切かどうかを判断できるだけの内容になっていない。
また、沖縄防衛局は、方法書作成手続に先立って、現場海域において、パッシブソナーの設置など、調査に着手している。
沖縄県環境影響評価審査会は、2008(平成20)年1月18日、沖縄県知事からの諮問に対する答申において、本件方法書は「環境影響評価の項目及び手法が適切なものであるか否かを判断できる内容が十分記載されているとは言い難い」などと厳しく批判し、「当該事業に係る方法書は、事業内容がある程度想定できる段階において書き直しをさせる必要がある。」と指摘した。また、「現在、事業者が実施している環境現況調査は、ジュゴンやサンゴ類等の生物的環境への影響が懸念されることから中止させる必要がある。」と指摘した。
沖縄県知事も、同月20日、上記審査会の答申を踏まえ、本件方法書について「書き直しをする必要がある。」との意見を述べた。
4 以上のとおり、沖縄防衛局が作成した方法書は、審査するに足りない不十分な内容である一方、沖縄防衛局は、方法書手続が終了する前に自然環境への影響が懸念される環境現況調査に着手している。
このような沖縄防衛局の行為は、環境影響評価法が定める手続を形骸化し、法の趣旨を没却するものである。
沖縄防衛局は、本件方法書を撤回し、手続きをやり直すべきである。
2008年(平成20年)1月28日
沖縄弁護士会
会長 新 垣 剛