決議・声明

投資詐欺的被害に対する緊急会長声明

 

 近時,沖縄県内において,事業投資や模合目的等で多額の出資金を集めていた団体が突然配当を停止し,出資者が多額の被害を受ける事件が相次いでおり,当会会員に対し相談が寄せられ,当会会員により被害者説明会等が行われています。これらの団体は,出資金を運用して高利の配当を行う等との宣伝文句で,短期間で多数の加入者から多額の出資金を集めていました。しかし,現段階ではいずれの団体も実際に資金運用を行った形跡は確認されておらず,当初から出資金を騙し取る目的で,計画的に行われた投資詐欺ではないかという疑いもあります。

 

 このような投資詐欺的行為を行う団体は,出資者に対して,出資金は確実に短期間で回収でき,その後は高額な利益を得ることができると説明しているという特徴がみられます。

 

  しかし,不特定多数の者から,出資金は確実に回収できるとして出資金を集める行為は,それ自体が出資法に反する違法な行為であり,それに加えて,当初から出資金を騙し取る意図で出資金を受け取っていたのであれば,その行為は刑法の詐欺罪にも該当する重大な犯罪行為です。

 

 こうした投資詐欺的行為において,出資者は金銭的被害を受けますが,出資者の被害は金銭的被害にとどまりません。投資詐欺的行為を行う団体の多くは,出資者が新たな顧客を紹介するとより多くの配当を得られる等の優遇制度を設けています。そのため,出資者のなかには,自分の親戚や友人を勧誘して利益を得ている人もいます。そのような出資者は,団体が破綻した際には紹介した親戚や友人との人間関係まで根こそぎ破壊されるという被害をも受けることになるのです。

 

 そして,一旦このような被害が発生すれば,その被害を回復することは非常に難しいのです。まず,金銭的被害については,これまでに社会問題化した事件の多くについて損害賠償請求や被害者による債権者破産申立等が行われてきましたが,投資した金額をほとんど回収できずに終わっています。そして,人間関係に及ぼされる被害については,一度信頼関係が失われると当然のことながらその回復は非常に困難で,取り返しがつかないことになります。

 

 このような被害を防ぐ最良の方法は,県民一人一人が,短期間で高利の配当が得られるという安易な儲け話はありえないことを十分に認識し,こうした団体に騙されないように注意し事前に予防することです。しかし,投資詐欺的行為を行う団体の幹部は,以前にも同様の事件に関与していた者が多く,巧みな勧誘を行っており,個人で注意を払うことにも限界があります。

 

 そこで,各行政機関においては,県民に対して広く注意を呼びかけ,問題ある団体には関係法令等に基づく行政取り締まりを行うと共に,警察においては,悪質な団体に対しては主体的に捜査を行い,犯罪行為を認識したなら速やかに取り締まりを行うなど,これまで以上に積極的な対応を行うことが投資詐欺的被害の防止,減少のために重要と考えられます。

 

 近時,投資詐欺的行為による被害が相次いで報道されていますが,それ以外にも投資詐欺的行為を行っていると見られる団体について公共機関の相談窓口へ数多くの苦情が寄せられており,今後もこうした団体の破綻による被害発生が大いに危惧されます。

 

 そこで,当会は,沖縄総合事務局,沖縄県,県内各市町村等行政機関に対し,全県民に投資詐欺的行為について注意を促すとともに,各行政機関等が連携して問題のある団体に対し関係各法令等に基づく行政指導等の対策をとるよう求め,また沖縄県警察本部に対し,悪質な団体に対し,捜査,取締り等を積極的に行うよう強く要望します。

 

 

  平成19年11月7日

 

         沖縄弁護士会

 

               会長   新  垣   剛

 

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