陸上自衛隊情報保全隊による監視活動に抗議し,中止を求める声明
1 2007年6月6日、陸上自衛隊情報保全隊が、個人・団体の動向を監視し、その情報を系統的に収集・分析していたことが報道された。報道によれば,自衛隊の内部文書には自衛隊イラク派兵反対の運動など、個人・団体による幅広い行動等の情報が詳細に記載されていたとのことであり,政府も情報収集活動を行っていたことは認めている。
情報保全隊が監視,情報収集の対象としていた団体の中には我が沖縄弁護士会も含まれており,上記内部文書には2004年に当会が行った自衛隊イラク派兵反対のビラを配布したことについて,その日時,場所,参加人数,活動内容が当時の弁護士会会長の実名と共に記載されていた。
2 このような情報保全隊による個人・団体の監視活動は,広く集会,街頭宣伝,ビラ配布,取材活動等の表現行為に及んでおり,これら表現行為を「反自衛隊活動」などとしてその内容を詳細かつ継続的に調査することは,憲法第21条で保障された表現の自由に対し強い萎縮効果をもたらすものである。
また,個人の容貌については公権力がこれをみだりに撮影することは日本国憲法第13条の趣旨に反し,現行犯性のある犯罪捜査などの場合以外は許されない(最大判昭和44年12月24日)。情報保全隊の行った個人の撮影は同最高裁判例に照らしてもその要件を満たしておらず,違憲・違法である。
そもそも,情報保全隊による個人・団体の監視活動は自衛隊法施行令及び陸上自衛隊情報保全隊に関する訓令に明記されておらず,法的根拠がない。また,個人・団体に対する監視活動が,自衛隊法に定められた任務に含まれるとは到底解されない。
以上のとおり,今回明らかとなった情報保全隊による個人・団体の監視活動は,明確な法律上の根拠がないばかりか,憲法で保障された表現の自由に強い萎縮効果を及ぼし,個人のプライバシーを侵害する違憲・違法なものである。
3 当会は,政府に対し,当会への違法な監視活動に厳重に抗議すると共に,今後個人・団体に対する違憲・違法な監視活動を行わないよう強く求めるものである。
2007(平成19)年6月8日
沖縄弁護士会
会 長 新 垣 剛