決議・声明

長崎市長に対する銃撃事件に厳重抗議する声明

 

  2007(平成19)年4月17日午後7時50分頃、長崎市内において、同月22日投開票の市長選挙に立候補していた伊藤一長長崎市長が、待ち伏せしていた暴力団幹部に背後から短銃で銃撃され、死亡するという事件が発生した。

 

選挙期間中の凶行により、志半ばで凶弾に倒れた伊藤市長のご冥福を衷心からお祈りする。

 

 新聞報道等によれば、犯人は、犯行動機について、市発注の工事現場での交通事故に関する補償等につき、市の対応に不満を持っていたなどと供述しているようであるが、政治的・思想的背景や動機については、未だ捜査中であり、真相は明らかにされていない。しかし、その動機がいかなるものであったとしても、現職の市長に対し、市長選の選挙期間中を狙って行なわれた銃撃行為は、民主主義に対する重大な挑戦であり、政治活動に対するテロ行為であって断じて許されないものである。

 

 長崎市では、1990(平成2)年1月18日にも、伊藤市長の前任の本島等市長が、右翼団体幹部に銃撃され、重傷を負う事件が起きている。2006(平成18)年8月15日には、山形県鶴岡市内の衆議院議員加藤紘一氏の実家と事務所が放火されるという事件も起きている。このように相次いで発生している政治テロ行為は、標的となった当該政治家のみでなく、他の政治家や諸団体の政治活動及び言論の自由を抑制し、萎縮させかねない民主主義の根幹を揺るがす行為であり、断じて許すことはできない。

 

今回の暴力団幹部によってなされた凶行が、暴力団は自らの主張や要求が通らないときは暴力をもって報復する反社会的集団であるという恐怖心を、一般市民のみならず地方自治体の職員等にも、より一層植え付け定着させることにより、暴力団組織・組員らが行う行政に対する不当要求行為に対して、現在全国的に運動を展開している行政対象暴力排除運動を後退させかねず、強い憤りを禁じ得ない。

 

 沖縄弁護士会は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現するという弁護士の使命に照らし、今回の政治活動の自由及び民主主義を否定する行為である長崎市長に対する銃撃行為に対し厳重に抗議する。

 

 また、沖縄弁護士会は、行政対象暴力によって、行政庁が不当な圧力にさらされることにより、行政の公正・中立が害されることになれば、民主主義・法治主義の否定にも繋がることに鑑み、民事介入暴力対策関係諸団体と連携し、暴力団の追放と壊滅に向けて全力を尽くす決意である。

 

 

2007(平成19)年4月26日

沖縄弁護士会

会 長  新 垣   剛

 

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