教育基本法改正に反対する緊急声明
教育基本法は、子どもが自由かつ独立の人格として成長するための基本理念が定められているものであり、準憲法的性格を有する重要な法律である。改正にあたっては、立法事実の存否や改正内容について十分かつ慎重な議論がなされなければならない。
そこで、沖縄弁護士会においては、教育基本法改正法案が、「伝統と文化を尊重する」「我が国と郷土を愛する」などの表現を盛り込んでいる点について「権力機構」としての国家を愛することを強要することにつながりかねないのではないかという疑念があること、この点について国民的議論が十分に尽くされているとはいえないこと、殊に、沖縄は過去に独立国家を形成していた歴史を有するが、「尊重すべき伝統と文化」が強調されていく過程で沖縄独自の伝統と文化がこれに背馳するものと位置づけられるおそれがないとはいえないことなどを指摘した上で、国民的議論を深めないままに同法を改正しようとすることについて抗議し、国民世論を踏まえた慎重な審議を求めてきた(2006年6月13日付会長声明)。
それにもかかわらず、与党は、国民的議論を深めず慎重な審議もないまま、去る11月15日、教育基本法改正法案について、衆議院の教育基本法特別委員会において野党欠席のまま単独採決を行い、翌16日には、衆議院本会議においても野党欠席のまま単独採決を強行した。
しかも、政府は、市民と政府の相互対話の場としてタウンミーティングを開催してきたが、その際、政府が質問事項を予め地元教育委員会に送る等、教育基本法改正に賛成する発言を参加者に依頼していたとの事実もあらたに判明している。
また、新聞報道等によれば、いじめ等の問題に悩む教育現場においては、教育行政を強化することによってかえって問題解決を困難にするとの意見が多数であるとの指摘もあるのであるから、政府は、そのような実際の教育現場の生の声に真摯に耳を傾け、法案審議を尽くすべきである。
このように、今国会に提出された改正法案においても、従前当会が指摘した問題点は全く解消されておらず、国民的な合意は全く形成されていない状況にある。
そこで、当会は、衆議院においてこのような問題点を解消しないままに与党単独採決を強行したことについて、強く抗議する。また、参議院に対しては、二院制の趣旨に則り、良識の府として国民世論をないがしろにした審議をすることのないよう強く求める。
2006(平成18)年11月29日
沖 縄 弁 護 士 会
会 長 大 城 浩