特例高金利等に反対する緊急会長声明
貸金業制度及び出資法の上限金利の見直しを検討していた金融庁及び法務省は,平成18年9月5日までに,自由民主党金融調査会貸金業制度等に関する小委員会で検討結果を報告した。報告内容は公表されていないものの,報道等によれば,施行日まで1年,経過措置期間3年及び特例措置最長5年の合計9年間はいわゆる「グレーゾーン金利」を存続させ,また「特例金利」として,30万円または50万円までの「少額短期特例」,500万円までの「事業者向け特例」を設け,いずれも年利28%を認める,というものである。
しかし,今回の貸金業制度及び出資法の上限金利の見直しは,最高裁判所がグレーゾーン金利の根拠となる貸金業規制法43条のみなし弁済規定の適用を否定して利息制限法による債務者救済を図る判決を相次いで示したことを踏まえ,深刻な多重債務問題を解決することを目的として行うものである。このことは,自由民主党・公明党の「貸金業制度等の改革に関する基本的考え方」や,金融庁「貸金業制度等に関する懇談会」で確認されてきた。加えて平成18年8月24日に開催された同「懇談会」では,特例高金利の導入に反対の意見が大勢を占めた。
また,日本弁護士連合会の発表によれば,高金利引き下げの署名は300万人を超え,39都道府県,880を超える市町村議会が,高金利引き下げの意見書を採択している。沖縄県においても,県議会を始め大部分の市町村議会が高金利引き下げの意見書を採択している。
このような状況の中で,長期にわたって「グレーゾーン金利」を存続させたり,利息制限法の制限を超える「特例高金利」を新たに導入することは,同「懇談会」の意見を無視するとともに,高金利の引き下げを求める国民の声に全く逆行するものであり,多重債務問題の改革を骨抜きにするものである。
沖縄県においては,人口一人あたりの貸金業者数が全国1位,日賦貸金業者の登録数自体が全国1位であり,多重債務問題は深刻な問題となっている。
そこで,当会は,平成18年5月31日の定期総会において,出資法の上限金利の引き下げ,みなし弁済規定の廃止を求める総会決議をし,金利引き下げ問題に全会をあげて取り組んでいる。
当会は,金融庁及び法務省が検討している特例高金利等に強く反対し,政府及び国会に対し,重ねて,次のことを強く要請する。
1 金利の見直しにあたり,「少額短期特例」,「事業者向け特例」等の特例高金利を設けないこと
2 出資法の上限金利を,利息制限法所定の15~20%まで引き下げること
3 貸金業規制法第43条のみなし弁済規定を改正法施行時に即時廃止すること
4 保証料などの名義での利息の脱法を認めないこと
平成18年9月8日
沖縄弁護士会
会長 大 城 浩