教育基本法改正に対する反対声明
政府は,先の「与党教育基本法に関する協議会」最終報告に基づき,2006(平成18)年4月28日,教育基本法改正案を国会提出した。
しかし,同改正案には,「伝統・文化」の尊重と所謂「愛国心」の問題,格差社会を助長するおそれがありはしないかなどの点について,慎重な国民的議論を深めるべき問題が含まれている。
例えば,同改正案は,「伝統と文化を尊重する」「我が国と郷土を愛する」などの表現を新たに盛り込んでいるが,これについては,結果として「権力機構」としての国家を愛することを強要することにつながりかねないのではないかという疑念があり,この点について国民的議論が十分に尽くされているとはいえない。殊に,沖縄は過去に独立国家を形成していた歴史を有するが,「尊重すべき伝統と文化」が強調されていく過程で,沖縄独自の伝統と文化がこれに背馳するものと位置づけられるおそれがないとはいえない。
また,同法の改正については,これに反対する声も多く,各地の弁護士会においても続々と反対声明が出され,日本弁護士連合会も「そもそも,教育は,本来人間の内面的価値に関する文化的な営みであって,政治的な立場や利害から中立なものでなければならない。伝えられるとおり,政府・与党内での合意のみで法案上程に至れば,国会での質疑・討論は,時の政治的な立場によって左右され,中立性が損なわれることになりかねない。このような形の法改正は,教育の憲法ともいわれる教育基本法の改正の在り方としては不適切であり,百年の計といわれる教育を根本において誤らせることになる。」との会長声明を発表している。
このように,同法の改正に関しては,国民的議論が尽くされているとは到底いえない状況であり,それにもかかわらず,改正をこの時期に国会提出して採決に向かおうとするのは,国民的議論をないがしろにするものであって,不当といわざるを得ない。
よって当会は,政府に対し,国民的議論を深めないままに同法を改正しようとすることについて抗議し,かつ国会に対しては,国民世論を踏まえた慎重な審議を求めるものである。
2006(平成18)年6月13日
沖縄弁護士会
会 長 大 城 浩