会長声明
在沖米軍は,2005年7月12日,沖縄県金武町のキャンプ・ハンセン内のレンジ4に建設していた都市型戦闘訓練施設において,実弾射撃訓練を開始した。
同施設は,もっとも近い金武町伊芸区の住宅地域からわずか300メートル,沖縄自動車道から200メートルしか離れていない場所に建設されており,建設開始当初から地元住民の強い反対があったにもかかわらず,これらの声を無視して訓練が強行されたものである。
キャンプ・ハンセンでは,長年にわたってさまざまな実弾演習が繰り返されており,伊芸区では人身事故も含む多数の流弾事故の被害を受けてきた。近年にも,1985年4月に発生した小銃弾が民家屋上の水タンクに貫通する事故や,1988年10月にM6ライフル弾やM249軽機関銃弾が民家そばで発見された事故などが繰り返されている。
米軍は今回の訓練実施について安全であると主張しているが,射撃に使用される銃器の射程範囲は3千数百から6千数百メートルに及ぶものであり,何よりも,実際に過去に多数の事故が発生していることからすれば,安全であるとの主張には根拠はないものというべきであり,地域住民の生命,身体や財産に重大な危険をおよぼすおそれがあることは明らかといえる。
日米地位協定3条1項により,米軍は日本国から使用を許された基地を管理・使用しているが,米軍は同条3項によって「公共の安全に妥当な配慮を払って」基地を使用する義務があり,また同第16条によって日本国の法令を尊重することを義務づけられている。したがって,米軍が,基地外の住民の生命,身体や財産に危険をおよぼすような方法で基地を使用してはならないことはいうまでもなく,今回の実弾訓練実施は,基地管理権を逸脱したものというべきである。
そして,日本国は,基地の提供者として基地の維持・管理に直接間接に関与しているのであるから,米軍が基地管理権を逸脱する使用をしている場合には,基地貸与国として,米軍に対してその使用態様の変更を求めることができるものというべきであり,住民の被害防止のために米軍と交渉をすることは国の責務というべきである。
よって,当会は,米軍に対して,直ちにレンジ4における実弾射撃訓練を中止することを求めるとともに,日本政府に対しては,日米合同委員会などを通じて都市型戦闘訓練施設の使用中止もふくめた住民への被害を防止する措置の交渉を行うことを求めるものである。
2005年(平成17年)7月14日
沖縄弁護士会
会 長 竹 下 勇 夫