「弁護士報酬敗訴者負担」法案に反対する会長声明
平成16年3月2日、弁護士報酬敗訴者負担制度の導入を目的として、「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」が第159回通常国会に上程され、現在継続審議となっており、今秋の臨時国会で審議される予定になっている。
上記法律案における弁護士報酬敗訴者負担制度は、当事者双方に弁護士が代理人としてついている場合において、訴訟提起後に当事者双方が合意のうえ裁判所に共同して申立を行った場合に限り、弁護士報酬の一部を敗訴者に負担させるという内容である。
このような合意による弁護士報酬敗訴者負担制度が導入された場合、これに契機として、私的契約や約款等に裁判上の紛争が生じた場合の弁護士報酬「敗訴者負担条項」が盛り込まれ、広く一般化していくおそれが極めて強い。弁護士報酬敗訴者負担条項が普及すると、消費者、労働者、中小零細業者など社会的経済的に弱い立場にある者は、敗訴した際の弁護士費用負担を恐れ、訴訟を提起したり応訴することを躊躇するようになり、結果として市民の司法へのアクセスに重大な萎縮効果を及ぼすことになる。このように、弁護士報酬敗訴者負担制度は、消費者、労働者、中小零細業者など社会的経済的に弱い立場にある者を裁判から遠ざけ、「市民の利用しやすい司法の実現」という司法制度改革の理念に反するものである。
そこで、当会は次の立法上の措置がなされない限り、本法案の成立に反対し、廃案とするよう強く求める。
1 消費者訴訟や労働訴訟など、一方が優越的立場にある当事者間の訴訟においては、訴訟上の合意による敗訴者負担制度を適用しないこと。
2 消費者契約、労働契約(労働協約、就業規則を含む)など一方が優越的立場にある当事者間の契約に盛り込まれた敗訴者負担の定めは無効とする。
2004年9月27日
沖 縄 弁 護 士 会
会 長 与 世 田 兼 稔