決議・声明

最低賃金額の大幅な引上げを求める意見書

第1意見の趣旨

当会は,沖縄地方最低賃金審議会に対し,早急に,最低賃金額を大幅に引き上げる旨の答申をすることを求める。
 

第2意見の理由

1 沖縄県は,子どもの相対的貧困率(平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子どもの割合)が29.9%に上るという,全国的に見ても最も深刻な貧困状態にある(沖縄県子どもの貧困実態調査(2015年(平成27年)1月29日))。
  他方で,沖縄県の最低賃金は,長らく全国でも最低額に甘んじており,この最低賃金額の低さが,沖縄県の貧困の重大な要因となっている。
2 中央最低賃金審議会は,本年7月頃,厚生労働大臣に対し,2018年度(平成30年度)地域別最低賃金額改定の目安についての答申を行う予定である。
  昨年,同審議会は全国加重平均で25円の引き上げ(全国加重平均848円)の答申をし,これに基づき沖縄地方最低賃金審議会でも最低賃金を23円引き上げるとの答申がなされ,最低賃金額は2017年(平成29年)10月1日以降737円となっている。
  しかし,最低賃金額である時給737円では,フルタイム(1日8時間,週40時間)で働いたとしても,月173時間として,月収で12万7501円,年収153万円程度にしかならない。
  この収入では,労働者が賃金だけで自らの生活を維持し,将来のための貯蓄をしていくことは到底困難であり,最低賃金法第1条が目的として掲げる「労働者の生活の安定」にはほど遠い状況である。
3 全国を見ても我が国の相対的貧困率は15.6%(厚生労働省2016年度(平成28年度)国民生活基礎調査)と高い水準にあり,貧困と格差の拡大は女性や若者に限らず,全世代で深刻化している。
  働いているにもかかわらず貧困状態にある者の多くは,非正規雇用労働者として最低賃金付近での労働を余儀なくされており,最低賃金の低さが貧困状態からの脱出を阻む大きな要因となっていることは疑いない。
  沖縄県は,正規労働者も非正規労働者も,男性労働者も女性労働者も,全国平均の3分の2までの賃金水準にとどまるような状態であり,このことはより深刻である。
4 最低賃金の地域間格差が依然として大きく,ますます拡大していることも見過ごすことのできない問題である。2017年(平成29年)の最低賃金は,最も低い高知県,佐賀県,長崎県,熊本県,大分県,宮崎県,鹿児島県,沖縄県で時給737円,最も高い東京都で958円であり,221円もの開きがあった。そして,このような地域間格差は年々拡大している。
  政府は,2010年(平成22年)6月18日に閣議決定された「新成長戦略」において,2020年(平成32年)までに最低賃金を「全国最低800円,全国平均1000円」にするという目標を明記した。
  しかし,2016年(平成28年)6月2日に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」にも,最低賃金を毎年3%程度引き上げ,将来は全国加重平均1000円程度にする方針が示されている。この方針によれば,最低賃金額が1000円に達するのは2023年(平成35年)となり,2010年(平成22年)の政府目標よりも後退している。時給1000円という水準はフルタイム(1日8時間,週40時間)で働いても年収は約208万円であり,単身者世帯にとってすら最低限度の生活を維持するのに十分な額といえないことからすれば,最低賃金1000円の達成は最低限の目標である。この最低限の目標の達成にすら5年を要するのでは,遅きに失するといわざるをえない。
5 さらにここで注意すべきは,この政府目標の1000円は,全国加重平均であるということである。
  例えば,東京などAランクについては,中央最低賃金審査会の答申は,2015年度(平成27年度)19円,2016年度(平成28年度)25円,2017年度(平成29年度)26円であるところ,沖縄を含むDランクはそれぞれ16円,21円,22円となっており,この3年間だけでもAランクとDランクでは差が11円広がっている。
  こうして最低賃金の地域間格差は縮まるどころか拡大しているのが現実である。この状態が続けば,全国加重平均で1000円となっても,沖縄県の最低賃金額が1000円に到達するのはまだまだその先でしかない。
  貧困からの脱出のためには,最低賃金額の大幅な引き上げが最も直接的かつ効果的であり,早急に上記目標を実現する必要がある。とくに沖縄県においては,その必要性は極めて高いと言わなければならない。
6 以上の理由から,当会は,沖縄地方最低賃金審議会に対し,早急に,最低賃金額を大幅に引き上げる旨の答申をすることを求める。
 
2018年(平成30年)7月17日

会 長  天 方  徹

 

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