2017年(平成29年)11月22日
意 見 書
沖 縄 弁 護 士 会
会 長 照 屋 兼 一
意見の趣旨
勾留中の被告人になされた紙面「インタビュー」に関し、検察官から弁護人に対し、質問行為がなされたものであるところ、これらの質問行為は、被告人と弁護人との秘密交通権を侵害し、また、被告人の表現の自由等の基本的人権に対する配慮を著しく欠いた不適切なものであった。
よって、これらの検察官による不適切な一連の質問行為に対し、強く抗議するとともに、再発防止の徹底を求める。
意見の理由
1 2016年(平成28年)12月22日付沖縄タイムス及び同月24日付琉球新報に、勾留中(接見禁止)の被告人について、弁護人を通じた「インタビュー」記事が掲載された。
上記記事に関し、担当検察官は、同月26日、弁護人に対し、「(新聞記者が)、弁護士に書面で被告人への質問を託し、被告人が弁護人を通じてインタビューに応じ、同紙記者が回答を得たとあるが、それは事実か」等と記載された質問書を送付した。
上記質問書に対し、弁護人は、接見禁止決定を前提とした上で、検察官の発問自体が、被疑者・被告人が社会的発言を行う権利を奪おうとするものである等と応答し、さらに、弁護人の行為の問題点を具体的に指摘するよう求めた。
しかしながら、検察官は、弁護人の求めを無視し、具体的な問題点の指摘をしないまま、三度にわたり書面で、どの弁護士がどのように関与したのかを尋ね続けたものである。
2 刑事訴訟法第81条は、勾留されている被告人に逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときに、弁護人等以外との接見を禁じることができる旨を定めているが、接見禁止決定といえども、一切の外部交通を禁止するものではなく、被疑者・被告人が外部の関係者と連絡を取る必要があるときには、弁護人において、罪証隠滅や逃亡につながるおそれがあるかどうか、伝言内容についてスクリーニングを行った上で、これを伝えることが許されなければならない。
3 この点、本件で問題となった「インタビュー」記事は、当該事件の内容に触れるものではなく、起訴事実についても、「今後法廷の中で明らかにしていきます」等と述べるにとどまっているなど、証拠隠滅や逃亡などには何ら関わらない事項が記載されているに過ぎないものであって、何ら接見禁止決定の趣旨に反するものではなかった。
ところが、検察官からの最初の質問書はともかく、2度目以降の質問書は、弁護人から具体的な問題点を指摘するよう求められているにも関わらず、これに応じず、ただただ、弁護人がどのように関与したのかを質問し続けているものであって、被告人と弁護人の秘密交通に介入しようとするものであり、許すことはできない。
4 また、接見禁止決定が付された被疑者・被告人であるからといって、憲法上の表現の自由が一切認められないと解するのは行き過ぎであって、罪証隠滅や逃亡に関わりない事項について、弁護人を通じて、外部に発信することは許されなければならない。ところが、今回の検察官の一連の質問は、証拠隠滅や逃亡のおそれとは無関係に、被告人の外部への発信行為そのものを問題視するものであって、表現の自由への配慮を著しく欠いた不適切なものであったといわざるを得ない。このような検察官の姿勢は、ひいては報道機関の取材活動の自由や報道の自由をも軽視することにもつながりかねず、基本的人権の保障を危うくするものと言わざるを得ない。
5 よって、当会は、秘密交通権を侵害し、また、被告人の表現の自由等の基本的人権に対する配慮を著しく欠いた検察官の不適切な一連の質問行為に関し、強く抗議するとともに、再発防止の徹底を求めるものである。
以 上