辺野古新基地建設工事の停止と沖縄県との真摯な対話を求める総会決議
翁長雄志沖縄県知事は、2015年(平成27年)10月13日、沖縄防衛局による普天間飛行場代替施設建設事業にかかる公有水面埋立申請の承認処分を取り消す処分をなしたが、国によって提起された違法確認訴訟判決を経て、2016年(平成28年)12月26日、承認取消を取り消す処分をした。これを受けて、国は、翌12月27日から工事を再開し、現在に至っている。
この間、沖縄県は、2017年(平成29年)3月28日、沖縄防衛局に対し、岩礁破砕許可時の申請内容から変更があったとして、許可条件に基づき、汚濁防止幕の設置工事を中止するように指示した。また、沖縄県は、沖縄防衛局が3月31日に岩礁破砕許可の期限が終了したにもかかわらず工事を続行したことを受けて、4月5日、岩礁破砕許可を申請するよう行政指導をした。
他方、国(沖縄防衛局)は、このような再三にわたる沖縄県の指導に従う必要はないとして、埋立て工事を継続し、4月25日には護岸工事に着手した。
岩礁破砕許可の要否をめぐっては、漁業権の存否に関する見解の対立がある。沖縄防衛局は、名護漁業協同組合の漁業権一部放棄(漁場縮小)により埋立海域の漁業権は消失し、岩礁破砕許可は必要ないと主張している。しかし、国は、従前、沖縄県と同様、漁協が漁業権一部放棄(漁場縮小)を特別決議をしても、知事による漁業権の変更免許がなければ漁場の区域が変更されるものではないとの解釈を示してきた。国は、自らの法解釈を変更してまで、工事を続行している。
このような国の動きに対し、翁長県知事は、差止め訴訟の提起や、公有水面埋立承認処分の撤回処分により、対抗する姿勢を示している。
そもそも辺野古新基地建設は、沖縄県民に加重な基地負担の継続を強いるものであるとともに、辺野古・大浦湾の豊かな自然環境を不可逆的に破壊するものであり、沖縄県民は、辺野古崎海域を埋め立て新基地を建設することには反対の意思を繰り返し示している。当会でも、これは沖縄の将来と日本の民主主義・地方自治等の観点から重要な憲法問題であるとの立場から、2010年(平成22年)12月13日の臨時総会にて「沖縄への新たな米軍基地建設に反対する決議」を挙げ、2015年(平成27年)10月27日の臨時総会では「辺野古新基地建設にかかる沖縄県知事の公有水面埋立承認取消処分の尊重を求める決議」を挙げたほか、会長声明等によって、繰り返し意見を表明してきた。
それにもかかわらず、国は、工事停止を求める県知事の意向や県民世論に反して、しかも前述したように法解釈の変更までして工事を継続している。そればかりか、翁長県知事が埋立承認撤回の意向を示したのに対し、菅義偉官房長官は、翁長知事個人に対して損害賠償を求める可能性を示唆する発言をしている。菅官房長官の発言は、県知事や県民世論を威圧し、萎縮させるおそれのあるものである。これら国の一連の行為は、民主主義、法治主義の観点から、重大な問題をはらんでいるといわなければならない。
また、いわゆる地方分権一括法の大きな柱の一つは、国と地方公共団体との間に対等・協力の関係を築いていくことであった。国が、沖縄県との間で対話もないまま、県知事や県民世論が反対する工事を続行し、国と沖縄県との間に再び訴訟が繰り返されようとしている現状は、対等・協力の関係とはほど遠いものであり、地方自治の本旨にも反する。
そして、一度破壊された自然環境は容易には元に戻らないが、国がこれ以上工事を続行すれば、早晩、辺野古・大浦湾の自然環境に不可逆的な破壊をもたらすことになる。
当会は、このような今般の情勢にかんがみ、あらためて国に対し、県知事の意向や県民世論に反する工事を停止して、沖縄県と真摯に対話をすることを求め、本決議をなすものである。
2017年(平成29年)5月30日
沖縄弁護士会