全面的国選付添人制度の実現を求める決議
当会は、国に対し、国選付添人制度の対象事件を、観護措置決定により少年鑑別所に収容され身体拘束を受けた全ての少年にまで拡大するよう、速やかに少年法を改正することを求める。
以上のとおり決議する。
決 議 理 由
1 弁護士付添人の活動について
弁護士付添人の活動は多岐にわたり、また非常に重要な活動を行っている。少年事件において、少年の味方として少年に付き添いながら、えん罪の発生が無いよう非行事実の認定において法律専門家の立場で審判に関与し、また、少年の更生に向けて、家庭や学校・職場等の取り巻く環境調整を図りながら家裁での要保護性の判断が適正に行われるよう審判に関与する、という重要な活動を行っている。
2 弁護士付添人選任の少なさについて
このような重要な活動を行う弁護士付添人であるが、実際に少年審判手続きにおいて弁護士付添人が選任される例は少ないのが現状である。
成人の刑事事件においては、約99%の被告人に弁護人が選任されているのに対し、少年事件の弁護士付添人の選任率は、少年鑑別所に収容され身体拘束を受けた少年の約49.5%、少年審判を受けた少年全体では約11.3%に過ぎず、少年に対する法的支援が不十分なのが現状である。
さらに身体拘束された少年のうち国選付添人が選任されたのはわずか約4.6%に過ぎないという衝撃的な数字が計算されている(いずれも2009年統計)。
3 国選付添人制度の不十分性について
2009(平成21)年5月から、被疑者国選弁護事件の対象が必要的弁護事件に拡大されたため、成人の刑事事件では被疑者段階から被告人段階まで国選弁護委任による法的支援を受けられることになったが、少年事件の国選付添人対象事件は、依然として故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪等一定の重大事件に限定されたままである。このことから、上記のような約4.6%の国選付添人選任率となっているのであるが、成人の刑事事件の場合と比較して、あまりに不十分であると言わざるをえない。
例えば成人では被疑者段階から被告人段階まで国選が選任される罪(例えば窃盗罪など)であっても、少年の場合には被疑者段階では国選弁護人が選任されたが家裁送致後においては国選付添人が選任されない、という事態が生じてしまっており、異常な事態であると言わざるを得ないのである。いわば少年が司法から置き去りにされているという制度上の矛盾が露呈している状況である。
4 弁護士会の対応について
日本弁護士連合会は、少年に対する法的援助を保障する観点から、全会員から特別会費を徴収することで財源を確保し、少年事件の援助制度を設けて、国選付添人の対象事件から外れる少年にも付添人費用を援助してきた。そして、少年の法的支援の要望に応えるために当番付添人制度を実施しており、当会においても2007(平成19)年から当番付添人制度の運用を開始し、2010(平成22)年11月からは離島での少年事件も含めてすべての少年に対して当番付添人を派遣できるように体制を整えたところである。
5 少年審判の適正手続きの保障及び少年への更正支援は国の責務であること
上記のような弁護士からの特別会費で支えられている現制度はあくまでも暫定的なものであり、少年事件における適正手続きの保障を図り、少年の更生を支援することは、本来的には国の責務である。
未来を担う少年に対して弁護士付添人の援助を受ける権利を実質的に保障するためには、国選付添人制度の拡充を早急に実現する必要がある。
よって、当会としては、国選付添人制度を、少なくとも観護措置決定により少年鑑別所に収容され身体拘束を受けた全ての少年を対象とするように、少年法の改正を求める次第である。
以上
平成23年(2011年)5月30日
沖縄弁護士会定期総会