沖縄憲法宣言
日本国憲法は、施行60年を迎え、国民投票法など、憲法をめぐる情勢は大きな変動の時を迎えようとしている。
「権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていない社会は、すべて憲法を持つものではない」。これは、フランス人権宣言に定められた有名な言葉である。
沖縄は、戦後27年にわたり米軍事支配下に置かれ、憲法による法の支配が実現されず、絶対的権力を持つ米国民政府の発する布令布告によって県民の権利が不当に侵害され続けてきた。
そのような中にあっても、法曹界の先達は、恣意的な軍事支配に抗し、法の支配の実現を求め続けた。しかし、これらは、ことごとく排斥されてきた。
沖縄の祖国復帰は、日本国憲法の下に帰ることであり、それは、法の支配の実現による自由と人権の回復を求めるものであって、人間としての尊厳を回復することであった。沖縄県民は、長い闘いの末に、日本国憲法を勝ち取ったのである。
しかし、沖縄が祖国へ復帰し憲法が施行されて35年を経過した今日、未だ、米軍専用基地の75%が沖縄に集中し、米軍人軍属による犯罪が繰り返され、米軍飛行場からの爆音被害、環境破壊等が発生し続けている現状では、未だ、県民の基本的人権が保障され、憲法が実現されているとは言い難い。
沖縄において、今為されなければならないのは、日本国憲法が沖縄において実現され、沖縄県民の基本的人権の保障が名実共に確保されることである。
日本国憲法の基本理念は、日弁連2005年(平成17年)11月11日人権擁護大会宣言で明らかにされたように、以下の3点である。
① 個人の尊厳を確保するために、国家権力を制限する立憲主義の理念を基本としていること。
② 主権が国民に存するという国民主権主義、基本的人権尊重主義をとっていること。
③ 戦争が最大の人権侵害であることに照らし、恒久平和主義に立脚すること。
さらに、同宣言は、日本国憲法第9条の戦争を放棄し、戦力を保持しないというより徹底した恒久平和主義が、平和への指針として世界に誇りうる先駆的意義を有するものである旨指摘している。
沖縄弁護士会は、憲法をめぐる大きな変動の時を迎えた今日、長い闘いの末、日本国憲法を勝ち取った沖縄であるからこそ、憲法改正の議論において、日本国憲法の基本理念が、普遍的なものとして尊重されなければならないことを高く宣言するとともに、国民一人一人が、憲法と真摯に向き合い、人間の尊厳と、基本的人権を守るための普遍的価値を定めた憲法の意味を共有することを望むものである。
沖縄弁護士会は、憲法改正をめぐる議論においても、日本国憲法の基本理念が尊重されることを求めるとともに、この基本理念を真に実現できるよう、基本的人権の擁護と社会正義の実現という使命を果たしていくことを決意する。
以上のとおり、宣言する。
平成19(2007)年5月30日
沖縄弁護士会定期総会