
校則の見直しを求める提言
2026年(令和8年)3月16日
沖縄弁護士会
会長 古 堅 豊
第1 提言の趣旨
学校の校則について、以下のとおり提言します。
1 学校は、子どもの権利保障及び規制目的と規制手段との合理的関連性の有無という観点から校則を見直し、合理性のない
校則は、直ちに是正又は廃止すること。
2 校則において、強制力をもって生徒の行動や服装等に一定の制限を課す事項については、制限の内容、確認方法、違反の
措置等を具体的に規定すること。
3 校則の内容は、以下のようなものにすること。
⑴ 生徒の個性や多様性を尊重し、過度に画一的にならないこと。
⑵ 障害がある子どもへの合理的配慮、様々な文化を背景に持つ子どもや性的マイノリティに対するきめ細やかな配慮を行
うこと。
⑶ 不必要な性別に基づく区別をやめること。
4 学校は、子どもの自己決定権や手続参加を尊重し、その基盤として子どもの権利条約を含む子どもの権利に関する教育を
積極的に行うとともに、その実践の場として、校則の制定及び見直しにおいて子どもが主体的に関与し、その意見を反映さ
せる機会を保障すること。
第2 提言の理由
1 はじめに
学校における基本的ルールである校則は、子どもの権利に深く関わるものです。例えば、校則による髪型や服装などの規
律は、子どもの自由や個性の尊重との関係が問題となります。また、子どもの意見が十分に聴かれずにルールを定めること
は子どもの意見表明権との関係で問題となります。
近年、学校における校則の内容や校則に基づく生徒指導に関し、必要かつ合理的な範囲を逸脱しているのではないかとい
った旨の指摘がなされているところであり、全国の学校における校則の内容や運用をめぐって、社会的関心が高まっている
といえます。
学校は、子どもが社会の一員として成長し、自らの意思で行動し、他者と共に生きる力を育む場です。その学校におい
て、子どもの権利と尊厳が尊重されないまま一方的にルールが押し付けられるとすれば、民主的社会の基盤である「人権の
尊重」「自己決定」「意見表明と参加」の理念が実践されないことになります。
このような問題意識から、当会において、2021年度に沖縄県内の全市町村立中学校の校則を取り寄せ、子どもの権利
の観点から検討を行いました。
本提言は、その検討結果を別紙沖縄県内の公立中学校の校則の問題点のとおり取りまとめると共に、子どもの権利の視点
から校則のあり方を見直すことを提言するものです。
2 校則制定や見直しに関する近年の動き
⑴ 文部科学省
ア 校則見直しを求める通知
校則について、文部科学省は、2021年6月、全国の教育委員会 などに学校や地域の実態に応じて校則を見直す
よう要請する通知を出し、児童生徒の実情、保護者の考え方、地域の状況、社会の常識、時代の進展などを踏まえて校
則を見直すよう求めました。その中で、「校則に基づき指導を行う場合は、一人一人の児童生徒に応じて適切な指導を
行うとともに、児童生徒の内面的な自覚を促し、校則を自分のものとしてとらえ、自主的に守るように指導を行ってい
くことが重要です。教員がいたずらに規則にとらわれて、規則を守らせることのみの指導になっていないか注意を払う
必要があります。また、校則の指導が真に効果を上げるためには、その内容や必要性について児童生徒・保護者との間
に共通理解を持つようにすることが重要です。」と述べられています。
イ 生徒指導提要の改訂
また、2022年12月、生徒指導提要が改訂されたところ、校則について、「校則の制定に当たっては、少数派の
意見も尊重しつつ、児童生徒個人の能力や自主性を伸ばすものとなるように配慮することも必要です。」「校則を制定し
てから一定の期間が経過し、学校や地域の状況、社会の変化等を踏まえて、その意義を適切に説明できないような校則
については、改めて学校の教育目的に照らして適切な内容か、現状に合う内容に変更する必要がないか、また、本当に
必要なものか、 絶えず見直しを行うことが求められます。さらに、校則によって、教育的意義に照らしても不要に行動
が制限されるなど、マイナスの影響を受けている児童生徒がいないか、いる場合にはどのような点に配慮が必要である
か、検証・見直しを図ることも重要です。」「校則の見直しの過程に児童生徒自身が参画することは、校則の意義を理解
し、自ら校則を守ろうとする意識の醸成につながります。また、校則を見直す際に児童生徒が主体的に参加し意見表明
することは、学校のルールを無批判に受け入れるのではなく、自身がその根拠や影響を考え、身近な課題を自ら解決す
るといった教育的意義を有するものとなります。」と記載されています。
⑵ こども大綱
2022年に成立したこども基本法に基づき、2023年12月22日に、「こども大綱」が閣議決定されました。同
大綱では、学童期・思春期の重要事項として「こどもに関わるルール等の制定や見直しの過程にこども自身が関与するこ
とは、こどもの意見表明権を保障し、当事者の視点からルールを見直し改善する契機にもなるとともに、身近な課題を自
分たちで解決する経験となるなど、教育的な意義があることから、学校や教育委員会等の先導的な取組事例について周知
する。」ことがあげられています。
⑶ 沖縄県
沖縄県においては、沖縄県教育庁県立学校教育課は、2021年12月1日、地毛証明書提出の廃止と校則の見直しを
求める通知を出しました。
また、同課は、2022年5月10日付けで現行の校則が合理的か、法的に問題がないかを確認することや、生徒、保
護者と意見交換した上で校則を制定することなどを求めました。
さらに、2024年3月22日に公表された2021年1月沖縄県立高等学校の生徒の自死事案に関する第三者再調査
委員会から発表された調査報告書(概要版)には、「本件高校の校則には、教育目的との関連で禁止・制限する必要性・
合理性が不明な規定も多くあること、生徒らが意見を表明し校則を見直す機会が設けられていないことなどの問題があ
る。」などと指摘があり、生徒指導提要(令和4年12月改訂)の校則見直しに関する記述を参考とし、現状の校則の禁
止・制限規定等が、本件高校の教育目的に照らして真に必要かつ合理的かを見直し、その見直しの際には生徒らが意見表
明できる場を設け、校則の内容をその制定した背景や理由等も合わせてホームページ等に公開するなど、校則の再検討を
行うよう提言がなされました。
上記提言を受けて、2024年4月30日、県教育長は、校則違反などの回数に応じて段階的に重い処分を生徒に課す
「イエローカード制度」について、廃止を含めて検討するとの方針を示しました。
このような中、実際に既存の校則の見直しを進めるために生徒主体の校則検討委員会が設置された学校や生徒会が校内
に意見箱を設置して校則変更の要望などを募る学校等、実際に校則の見直しに取り組んでいる学校もありますが、202
1年度に当会が行った校則調査を見る限り、未だ十分に取り組めているとは言いがたい状況にあると思われます。
3 子どもの権利について
⑴ 憲法
ア 人権とは、人間が人間として生きてゆくための不可欠な権利であり、人が生まれながらに当然にもっている権利で
す。その根底にあるのは、「個人の尊重」の原理です。これは、人権保障を目的として国家権力を制限する近代立憲主
義の基底的な原理です。憲法は、こうした近代立憲主義の流れをくみ、第13条で、「すべて国民は、個人として尊重
される」と定め、個人の尊重原理に立脚した上、個人の人格的生存に不可欠な利益を内容とする権利の総体として幸福
追求権を保障しています。「個人の尊重」とは、一人ひとりの人間を、自立した人格的存在として最大限尊重する、平
たくいえば、「一人ひとりの人間を大切にする」ということを意味します。
イ また、憲法第26条は、教育を受ける権利、すなわち子どもの学習権を保障しています。この点、旭川学テ訴訟最高
裁判決(昭和51年5月21日)は、「国民各自が、一個の人間として、また、一市民として、成長、発達し、自己の
人格を完成、実現するために必要な学習をする固有の権利を有すること、特に、みずから学習することのできない子ど
もは、その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有するとの観念が存在
していると考えられる。換言すれば、子どもの教育は、教育を施す者の支配的権能ではなく、何よりもまず、子どもの
学習をする権利に対応し、その充足をはかりうる立場にある者の責務に属するものとしてとらえられているのである。」
と述べ、成長発達するために必要な学習をする権利や子どもが成長発達するための大人の援助を求める権利を認めてい
ます。
ウ 他方、基本的人権は無制限ではなく、原則として「公共の福祉」の観点から最小限度の制約が許されるとされていま
す。もっとも、「公共の福祉」とは人権と人権の衝突の場合の調整原理で、国益とか全体の利益などを指すものではあ
りません。
したがって、法令や行政行為による最小限度の制約を超える基本的人権の制約は、国内法の最高規範である憲法に違
反するものとして許されません。学校内のルールである校則による制約も、同様に必要性や合理性が求められ、これを
欠く場合には、違法と評価されるものと考えられます。
⑵ 子どもの権利条約(児童の権利条約)~意見表明権の重要性
子どもの権利条約は、「子どもの最善の利益」を考慮して、子どもの「人格の完全なかつ調和のとれた発達」のために
不可欠である子どもの権利が、あらゆる場で実現されることを求めた条約です。日本は1994年4月22日に批准し、
同年5月22日に発効しました。
子どもの権利条約の特徴は、子どもを「保護の対象」とするだけではなく、「権利の主体」として認め、子どもに対
し、自身に関係のあるすべての事柄について自由に意見を表明し、その意見が尊重される権利(子どもの意見表明権)を
保障していることにあります(第12条)。締約国は、自己の意見を形成する能力のある子どもが、子どもに影響を及ぼ
すすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保することとされ、この場合において、子どもの意見は、
その子どもの年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとされています。これは、子ども自身が自分の思いや考えを
自由に表現することが権利であるということを明確に示した重要な規定です。
学校は、多くの子どもが一日の大半を過ごし、他の子どもや、教職員・保護者をはじめとする大人と関わり合いなが
ら、授業や課外活動等の様々な活動を行う場です。その中で、子どもは、意見を表明し、多様な他者との対話を通じ、
様々な経験を得て、人格を形成していきます。それゆえ、学校において意見表明権を確立することは、特に重要といえま
す。
そして、子どもの意見表明権の保障とは、単に意見を述べる機会を形式的に与えることではなく、子どもが安心して自
らの考えを表現できる環境を整えることを意味します。そのためには、発達段階に応じた説明・対話の工夫、意見形成へ
の支援、子どもに意見を述べることを強要しないこと、そして意見を軽視しない姿勢が求められます。
また、子どもは、意見を表明し尊重されるという経験を経て、多様性ある民主政における、合意形成プロセスを学ぶこ
とができるのです。子どもにとって、学校は人生の初期に接する社会です。その社会でどのようなルールに服するのか、
ルール策定に関与できるのかは、子どもの権利や法規範に対する意識に影響し、民主主義国家の将来の一員としての経験
を積むことにもなります。
4 校則の定義及び法的根拠
「校則」は法令用語ではなく、一般には、「学則」「生徒心得」「義務 規定」「学習の心得」などの校内規則の総称として使
われています。
校則は、学校によって全生徒に対して画一的に示され、生徒の生活・行動を直接かつ継続的に規制する生徒指導に関する
規範としての性格を持っています。そして、校則に違反した場合に処分等の学校による何らかの強制力が予定されているも
のは特に問題となります。
校則制定権の根拠について法の明文はありませんが、校長に校則制定に関する権限と責任、一定の裁量があるとされてい
ます。
もっとも、学校長に校則制定権が認められるとしても、校則は生徒の自 己決定権に関わるものであることからすれば、少
なくとも当事者である生 徒の意見を尊重しなければならず、校則を制定・改正するにあたっては、 生徒も手続きに参加す
るべきです。
この点、国連子どもの権利委員会は、日本に対し、日本の子どもの意見表明権が家庭・学校その他のあらゆる場所で軽視
されている旨の勧告を重ねて行っています。例えば、2010年6月の最終見解において、「学校が児童の意見を尊重する
分野を制限していること、政策立案過程において児童が有するあらゆる側面及び児童の意見が配慮されることがないことに
対し、引き続き懸念を有する。委員会は、児童を、権利を有する人間として尊重しない伝統的な価値観により、児童の意見
の尊重が著しく制限されていることを引き続き懸念する。」と指摘していることに留意すべきです。
5 校則の正当性及び限界
学校は、子どもの学習権を実現する場所の一つで、子どもは学校生活を通じて多くのことを 学び成長発達していきます。
学校には、子どもに対して、その学習権を十分に保障できるような環境を提供することが求められています。
もっとも、学校は多くの子どもが共同生活を送る場でもあることから、子どもの教育に適した環境を整備・維持するとい
う教育目的を達成するために、一定の範囲でルールを設けることが必要となる場合があります。
このように、子どもの学習権や成長発達する権利を実現することを目的として、集団生活の中で他の子どもたちの権利と
の調整を図るために設けられるルールが校則です。
したがって、校則は、決して子どもを管理するためのものではなく、教育目的を実現するためのものとして位置づけられ
るべきものです。
前述のとおり、子どもには自己決定権があり、自己の生活や人格にかかわる事項について一定の自己決定権を有していま
す。例えば、どのような服を着るのか、 どのような髪型にするのか等は子供の人格的自律に関わる事項であり、学校内にお
いても、当然に尊重されるべきものです。
校則によって子どもの自己決定権を制限するにあたっては、その制限が、教育目的を達成するために必要・不可欠であ
り、かつ憲法・子どもの権利条約から見て正当なものであることが求められます。また、その手段や手続も教育的配慮のも
とに適正な手続きを踏まえて行われなければなりません。しかも、校則は、生徒全体に対し一律に適用されるものであるこ
とから、一律に規制するだけの教育目的が存在するか否かも慎重に検討される必要があります。
以上の点を踏まえると、校則を検討するにあたっては、①規制に真に必要かつ重要な学校教育上の目的が認められるこ
と、②規制目的と規制手段(態様・程度) が実質的に合理的関連性を有することの2つの要件を満たしていることが必要であ
り、いずれかの要件を満たさない場合には当該校則については廃止や見直しが必要であると考えられます。
「昔からあるから」「そう決められているから」「高校生らしいから」「中学生らしいから」といった説明ではなく、納得の
いく合理的理由、必要性を子どもや保護者に説明できるか、という観点から本当に必要な校則なのか、今一度抜本的に見直
す必要があります。
6 男女性差、LGBTQ
トランスジェンダーの子どもが、男女別の制服や髪型の規制に従うことに大きな苦痛を感じていることがあり、不登校の
背景になっている可能性もあります。この点、当該子どもだけ例外的運用を認めるとすれば、望まないアウティング(本人
の了解を得ずに勝手に第三者に本人の性自認等を暴露すること)を招来するおそれもあり、適切な解決とならないばかりか
より問題を深刻化するおそれもあります。
このような観点からも校則自体の見直しを検討する必要があります。
この点、全国では、制服のスカートとスラックスの選択を認める学校も増えてきており(全国の公立高校で制服が指定さ
れている学校のうち女子生徒にスラックスを用意している学校は4割を超えます。)、ジェンダーレス化とともに機能性や防
寒・防犯対策の観点からも、望ましい方向性だと考えられます。
7 まとめ
沖縄県内の多くの学校においては、校則の見直しに向けた取組が始まりつつあるものの、依然としてその内容や制定過程
について、子どもの権利の観点から十分な検討がなされているとは言い難い状況が見受けられます。校則は、子どもを一方
的に管理するためのものではなく、子どもの学習権や人格の尊重を前提として、学校における教育目的を実現するために必
要かつ合理的な範囲で定められるべきものです。また、その見直しの過程においては、子どもが主体的に関与し、自らの意
見を表明し、その意見が適切に尊重されることが重要です。
学校は、子どもが社会の一員として成長し、他者とともに生きる力を学ぶ場です。校則の見直しの過程そのものが、子ど
もが対話や合意形成を学び、民主的な社会の一員としての経験を積む機会ともなり得ます。その意味において、校則の在り
方を子どもの権利の視点から再検討することは、学校教育の質を高めることにもつながるものと考えます。
本会は、この提言の送付に留まらず、各学校における校則の見直し作業や、子どもたちや教師等への子どもの権利教育に
おいて、専門的知見から協力できる体制を整えています。より良い学校環境を共に築いていくため、本提言が各学校におけ
る校則の見直しや子どもの権利の理解を深める取組の一助となることを願います。
以 上
(別紙) 沖縄県内の公立中学校の校則の問題点
1 はじめに
沖縄県弁護士会は、令和3年4月、沖縄県内の市町村立中学校138校から、生徒心得、生活のきまり等の名目のいかん
に関わらず、中学校内外における生徒の言動、身なり、持ち物等に関する決まり事・ルール(いわゆる「校則」)が記載さ
れた文書について開示を受け、調査を行い、その結果をとりまとめました。
その結果、沖縄県内の市町村立中学校の校則の問題点について、以下の点が指摘できます。
なお、令和3年4月前後に開示を受けた文書について調査を行ったものであり、その後現在までに見直されている可能性
があります。
2 校則制定の目的に関する規定
提言本文記載のとおり、特に強制力をもって生徒の行動や服装等に一定の制限を課す校則については、①規制に真に必要
かつ重要な学校教育上の目的が認められること、②規制目的と規制手段(態様・程度)が実質的に合理的関連性を有すること
が必要であり、このような観点からの検討が求められます。
3 服装について
制服(標準服)を定めること自体の評価については本稿では言及しませんが、制服(標準服)のルールを定める上では、
少なくとも生徒の個性や多様性への配慮が必要です。男女の別による制服(標準服)の指定をせず、ズボンタイプ・スカー
トタイプから制服を選択する方法を採る学校はこの点に配慮したものと評価できます。もっとも、選択制服制の学校であっ
ても、男女別のイラストで服装・髪型のルールを説明をしていたり、頭髪のルールは男女別に定めていたりと、全体を見る
と趣旨に沿った整備がなされていない印象を受ける学校が存在しました。
また、下着の色やその他着こなし等のルールについても、規制の目的を再確認し、その目的と手段の実質的に合理的関連
性を再確認した上で、規制すること自体の要否、規制の内容、程度について検討されるべきです。
また、防寒着についての規定がない学校が多いのは沖縄特有の状況と思料されますが、ひざ掛けも含めて防寒対策は生徒
の健康にも影響するものですので、少なくとも一切着用を禁止するとの校則は、(明文規定はないが実際上そのように運用
されている場合も含めて)見直されるべきです。
4 頭髪について
ほとんどの学校が「中学生らしい髪型」という共通の抽象的規定を置いていますが、具体的な規制の内容については学校
毎に異なる状況であり、「中学生らしい髪型」とはどのような髪型であるのか、それだけでは不明確です。
他方で、髪型を指定したり、長さを細かく規制したりすることは、頭髪が学校生活以外の私生活に直接影響するものであ
ることや、生徒の個性や多様性の尊重に照らし相当ではありません。なお、多数の髪型を細かく列挙し禁止することは、か
えって、そこに列挙されていない髪型は許容されるのか否か(例示列挙か限定列挙か)不明確になっているものと思料され
ます。
そもそも頭髪を規制する目的がどこにあるのか再検証し、頭髪を規制する必要があるのかを検討すべきです。そのような
検討を経て、規制する必要があるとする場合、その目的のためにはどのような頭髪を規制すべきかといった検討がなされる
べきです。
また、髪型の規制に男女の別を設ける合理的理由については、再度検討する必要があると思料します。
なお、地毛証明を明示している学校はなかったのですが、パーマの禁止や染髪の禁止をしている学校は多く、実態として
地毛証明に近い調査手段を用いていないか見直される必要があります。
5 その他のルール
⑴ 眉毛
眉毛は、場合によってはコンプレックスに繋がることがあるため、眉毛を剃る等を許容すべき場面が存在すると思われ
ます。
しかし、眉毛を剃る等を許容することが明示されていない規定や、眉毛を剃ることで例外なく各種の行事、大会への参
加を禁止している規定があり、これらについては改善の余地があると思われます。
他方、学校職員と相談のうえ許容する規定が設けられている点は、生徒に対する一定の配慮があり、評価すべき点では
ありますが、許可される基準やそもそも許可を要すべきものか等再考の余地もあります。
これらを検討するにあたっては、頭髪に関する規定と同様に、眉毛を剃る等を規制する趣旨、目的、規制方法、規制の
程度を再検証すべきです。
なお、「眉毛の変形は禁止する」との規定をしている学校もありましたが、何が規制されているのか不明確です。
⑵ 携帯電話の持ち込みについて
携帯電話の持ち込みの規制については、「学用品以外(勉強に関係ない物)は持ってこない」との規定のみを置いてい
る学校が多くみられました。学用品以外の物について例示がある学校もありましたが、持ってきてはいけない物が何であ
るかが不明確な規定です。
また、「原則持ち込み禁止」とのみ書かれているが、何が例外にあたるのかが不明である規定もありました。
6 違反者に対する対応
教室に入れない、授業・対外行事に参加させないという対応は、当該生徒の授業を受ける権利を制約することになりま
す。また、強制的に着替えさせたり、所有権放棄をさせたり、髪を切らせたり染めさせたり、中体連への参加を許さないと
することも、権利制約の程度が高い対応と言わざるを得ません。
指導を行うという場合であっても、叱責されたり、内申点に影響したり、という事実上の不利益を伴うのであれば、権利
制約を伴う規制です。
規制が権利制約を伴う以上は、原則として、どのような行為が違反になるのかが明確である必要があり、不明確な規定に
対する違反に対して強い権利制約がなされるのは相当ではありません。なお、校則では何らの言及もなされていないのに、
違反に対して強い権利制約を伴う対応がなされることは許されないと言えます。
この点、罰するためにルールを細かくするという方向の検討をするのではなく、そもそも罰する必要があるのか、規制す
る必要があるのかという視点から検討がなされるべきです。
7 校則の制定・変更等の生徒の関与について
令和3年度の調査時には、生徒の校則の制定・変更等への参加機会についての規定を有している学校は少なかったです。
校則改定のための手続きを設け、生徒や保護者の意見を聴取して協議する手続き的関与を保障する規定を設けるよう改
善されるべきと思料します。








