死刑執行に抗議する会長声明
2025(令和7)年6月27日、東京拘置所において1名の死刑が執行された。前回の執行から、約3年振りの執行である。
2024(令和6)年11月、国会議員、学識経験者、警察・検察出身者、弁護士、経済界、労働界、被害者団体、報道関係者、宗教家及び文化人らにより設置された「日本の死刑制度について考える懇話会」が、委員16名全員一致の意見として、「現行の日本の死刑制度とその現在の運用の在り方は、放置することの許されない数多くの問題を伴っており、現状のままに存続させてはならない」、「早急に、国会及び内閣の下に死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体を設置すること」を提言した。政府が、この提言に真摯に向き合うことなく、死刑を執行したことは、誠に遺憾である。
我が国は、死刑制度を維持し、死刑執行を続けてきているが、国際的には、死刑廃止が確固たる潮流になっている。その背景には生命の絶対不可侵性という理念・価値観の普遍化がある。国際社会の一員として我が国もこうした国際的動向を軽視することはできない。昨年再審無罪が確定した袴田事件等が示すように、誤判・冤罪の可能性は決して抽象的なものではない。死刑制度が存在する限り、誤判による死刑執行を避けることはできない。また、死刑固有の犯罪抑止力は証明されていないなど死刑制度の合理性が十分に裏付けられているともいえない。
他方、犯罪により命が奪われた場合、失われた命は二度と戻ってこない。ご遺族が加害者に対し厳罰を望むことはごく自然なことであり、その心情は十分に理解できるところである。犯罪被害者やご遺族を支援する我が国の施策はいまだ不十分であり、これを抜本的に拡充していくことは喫緊の課題である。
こうした事情等を踏まえ、当会は、2022(令和4)年3月の臨時総会において、政府及び国会に対し、死刑の代替刑を導入するとともに、犯罪被害者支援の抜本的拡充をした上で、死刑制度を廃止することを求める決議を採択した。
今回の死刑執行に対し、当会は、強く抗議するとともに、改めて、政府に対し、死刑の代替刑の導入及び犯罪被害者支援の抜本的拡充とともに死刑制度を廃止すること、それまでの間、死刑執行を停止することを求める。
2025(令和7)年7月29日
沖縄弁護士会
会 長 古 堅 豊