決議・声明

能登半島地震に関し法テラス支援特例法の制定等による法的支援の継続を求める会長声明

 

1 2024年(令和6年)1月1日に発生した能登半島地震から1年以上が経過した。能登半島地震は、同年1月11日に、

 政令により、総合法律支援法第30条第1項第4号に規定する非常災害に指定されており、日本司法支援センター(以下「

 法テラス」という。)における「大規模災害の被害者に対する法律相談援助制度」(以下「被災者法律相談援助制度」とい

 う)の適用対象となった。この制度は、政令で非常災害と指定された災害について、発災後最長で1年間、被災地に住所、

 居所、営業所又は事務所(以下「住所等」という。)を有する者に対し、資力を問わずに法テラスにおける無料相談を実施

 する制度であり、能登半島地震についても、同年12月31日までの期間が定められた。過去には、2016年(平成28

 年)熊本地震をはじめとして、2018年(平成30年)7月豪雨、2019年(令和元年)東日本台風、2020年(令

 和2年)7月豪雨にも適用された。
  能登半島地震の被災地では、法テラスの事務所における相談に加えて、事務所へのアクセスが困難な地域には移動相談車

 両(法テラス号)を派遣するなどの対応がとられており、被災者法律相談援助制度は、能登半島地震の被災者の法律相談ニ

 ーズに応えるうえで重要な役割を果たしている。


2 内閣府の非常災害対策本部の発表によれば、2025年(令和7年)1月28日時点での被害状況は、死者・行方不明者

 が517名(うち災害関連死が287名)、負傷者が1394名、半壊以上の住家被害が2万9797件となっており、2

 011年(平成23年)に発生した東日本大震災以降最大の被害が発生している。また、2025年(令和7年)1月1日

 点で石川県内の仮設住宅や公営住宅に2万1807名の方が避難を余儀なくされており、さらに少なくとも全国30の都

 府県に937人の被災者が県外避難しているとの報道もある。

  被災地では、復旧に向けた関係各位の懸命な活動が続いており、徐々に復旧が進みつつあるが、被災地へのアクセスの困

 難さや自治体、関係事業者のリソース不足もあり、発災後1年以上が経過した現時点においても、依然として多くの被災者

 が避難を余儀なくされており、公費解体も十分には進んでいないなど、生活再建の入り口にすら立っていない被災者も多数

 存在する。被災者支援制度の基礎となる罹災証明書についても、判定そのものやその基礎となる資料の情報公開等について

 問題が指摘されており、被災者からの相談も継続すると考えられる。また、災害関連死の認定数も増加しており、災害関連

 死の申請に関する相談や対応も継続する可能性が高い。これらに加えて、各種の支援金の申請、地震に起因する紛争の解決、

 自然災害債務整理ガイドラインに基づく債務整理を含む債務の処理など、さらに多数の相談ニーズや紛争処理のニーズが生

 じることが容易に予想される。


3 このような状況であるにもかかわらず、被災者は、2025年(令和7年)1月1日以降、資力を問わない被災者相談は利

 用できず、地震によって未だ生活再建のめども立たない状態にありながら、資力を問わない被災者相談を利用する機会を失っ

 ている(ただし、2024年(令和6年)12月に上記非常災害に指定された同年9月の能登豪雨災害の被災地とされる能登

 半島の3市3町の被災者は除く。)。


4 東日本大震災の際には、上記の総合法律支援法に基づく非常災害の指定の制度はまだ存在しなかったが、発災から約1年後

 の2012年(平成24年)3月23日に、「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特

 例に関する法律」が制定され、同年4月1日から施行された。この特例法による制度は、被災地に住所等があった者であれ

 、資力を問わず法テラスにおける法律相談援助、代理援助等を受けられること、裁判所の手続のほかにADRなどが代理援助

 ・書類作成援助の対象となること、事件の進行中は立替金の返済が猶予されることなどの特色があり、当初は3年間の時限立

 法であったが、2021年(令和3年)3月31日まで、2回に渡り、期間が延長された。

  能登半島地震については、東日本大震災以降最大規模の被害が生じていることに加え、上記のとおり、災害からの復旧や生

 活再建が様々な事情から停滞していることからすれば、同地震に関しても同様の特例法を制定し、法テラスによる支援を継続

 すべきである。


5 そこで、今後も確実に生じる被災地における法律相談ニーズに十分に応えるため、総合法律支援法の改正によって、現在1

 年以内とされている同法第30条第1項第4号における政令による指定期間をより柔軟に延長することを可能とし、可及的か

 つ速やかに法テラスにおいて能登半島地震の被災者として資力を問わない無料法律相談の実施を可能とすべきである。

  さらに、東日本大震災における対応と同様に、被災地に住所等を有していた者であれば資力を問わず法テラスにおける法律相

 談援助、代理援助等を受けられること、裁判所の手続のほかにADRなどについても代理援助・書類作成援助の対象とするこ

 と、事件の進行中は立替金の返済が猶予されること、などを含む法テラスの業務に関する特例法を制定すべきである。

 

                                2025年(令和7年)2月12日                                             

                                      沖縄弁護士会

                                        会長 野 崎 聖 子

 

ファイルのダウンロードはコチラ
PDF

 

前のページへ戻る