「袴田事件」再審無罪判決を受け、改めて
再審法の改正及び死刑制度の廃止を求める会長声明
本日、静岡地方裁判所は、袴田巌さんに対し、再審無罪判決を言い渡した。
「袴田事件」は、1966年(昭和41年)6月30日、一家4名が殺害され、放火された住居侵入・強盗殺人・放火事件である。同年9月、袴田さんがこの事件の犯人として起訴された。袴田さんは、第1回公判より一貫して無実を訴えていたが、1968年(昭和43年)年9月、静岡地裁で死刑判決が言い渡され、1980年(昭和55年)11月、上告が棄却され、死刑判決が確定した。
2014年(平成26年)3月27日、静岡地方裁判所は、第二次再審請求に対し、再審開始の決定をした。同時に出された死刑及び拘置の執行の停止の決定により、袴田さんは釈放された。ところが、検察官がこの再審開始決定に対し即時抗告をしたため、その後の特別抗告審の差戻決定等を経て、再審開始決定から約9年も経過した2023年(令和5年)3月、この開始決定はようやく確定した。
2023年(令和5年)10月、静岡地方裁判所において、第1回再審公判期日が開かれ、本年5月の第15回公判期日において結審し、本日の無罪判決を迎えるに至った。袴田さんが起訴されてから実に58年間を要したことになる。
長きにわたり、袴田さんを支援してきた姉袴田ひで子さんや市民の方々、袴田さんの無実を信じ弁護活動に取り組んできた弁護団の方々には、心から敬意を表したい。
「袴田事件」の再審開始に至るまでかくも長期間を要した経過は、再審制度における証拠開示制度の不備や再審開始決定に対する検察官による不服申立てが可能であることなど現行再審制が抱える問題点を如実に示すものである。2023年(令和5年)12月7日の当会臨時総会における「再審法の改正を求める決議」のとおり、誤判による被害者の迅速な救済のため、再審請求手続における証拠開示の制度化や再審開始決定に対する検察官による不服申立ての禁止を盛り込んだ再審法の改正を速やかに行うべきである。
また、「袴田事件」は、誤判による死刑執行の危険性が、抽象的なものではなく、現実的なものであることを思い知らせるものである。死刑判決を下すのは人であり、死刑制度がある以上、誤判による死刑の執行を避けることはできない。2022年(令和4年)3月11日の当会臨時総会における「死刑制度の廃止を求める決議」のとおり、死刑の代替刑を導入するとともに、犯罪被害者支援の抜本的拡充をした上で、死刑制度を廃止すべきである。
当会は、今回の再審無罪判決を機に、改めて、政府及び国会に対し、再審法の改正を速やかに行うこと及び死刑制度を廃止することを強く求めるものである。
そして何より、本件無罪判決が早期に確定し、袴田さんが、真の自由を得て、一人の市民として人間らしく穏やかな人生を送ることができるよう切に願っている。
2024年(令和6年)9月26日
沖縄弁護士会
会長 野 崎 聖 子