決議・声明

旧優生保護法に関する最高裁大法廷判決を受けて、同法による被害の全面的な回復を求める会長声明

 

本年73日、最高裁大法廷は、旧優生保護法に基づいて実施された強制不妊手術に関する国家賠償請求訴訟5件の上告審において、旧優生保護法による被害について、除斥期間(改正前民法第724条後段)の適用を制限し、被害者に対して国が損害賠償責任を負うことを明確にしました。

1948年に制定された旧優生保護法は、「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」ことを目的に掲げた法律であり、このような優生思想に基づき、1996年に母体保護法に改正されるまでの間、同法の適用に基づいて、不妊手術が約2万5000件、人工妊娠中絶が約5万9000件、合計約8万4000件もの手術が実施されました。これは戦後最大規模の重大な人権侵害です。

このような旧優生保護法について、本判決は、個人の尊厳と人格の尊重の精神に著しく反する上、差別的なものであり、憲法第13条及び第14条第1項に違反することを認め、国の立法行為は違法であったと判断しました。その上で、旧優生保護法による被害に除斥期間を適用することは、著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができないとして、従来の除斥期間に関する判例を変更しました。大変画期的な判決であり、高く評価できます。

国は、旧優生保護法による全ての被害者について被害回復を実現する必要があります。現行の一時金支給法を抜本的に改めるなど、被害者の高齢化等も踏まえた早期の全面的な解決に積極的に取り組むべきです。

また、旧優生保護法は、多数の人に取り返しのつかない被害を与えただけでなく、優生思想に基づく差別・偏見を社会に深く根づかせたのであり、今なお障害のある人の尊厳を傷つけ、生きづらさを助長しています。我々は、旧優生保護法が廃止されるまでに長い時間を要したことを社会全体として深く反省し、優性思想に基づく差別・偏見が甚大な人権侵害を引き起こすものであることを踏まえて、現在もなお社会に蔓延する差別・偏見をなくす活動につなげていかなければなりません。

当会は、本判決を機に、全ての被害者に対する早期の全面的解決に向けて真摯に取り組むとともに、優生思想に基づく差別・偏見をなくし、誰もが互いに尊重し合うことができる社会を実現するために、努力を重ねていくことを表明します。

2024(令和6)年7月30日

沖縄弁護士会 会長 野崎 聖子

 

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