詐欺的投資被害を防止するために、取消権の拡充を含む消費者契約法の改正、消費者教育の推進、見守りネットワーク確立を含む体制整備を求める総会決議
詐欺的投資被害の発生が後を絶たない。地金取引、健康食品販売・健康器具販売預託、和牛預託等様々な被害が繰り返され近年では暗号資産を利用した全国規模の詐欺的投資事件の多数の被害が沖縄県内でも確認されている。詐欺的投資被害では、投資対象や手法が時勢に合わせて次々変化するものの、社会不安を煽る巧みな悪質事業者の勧誘に始まり、知人、親戚等の勧誘を介して新たな被害者を生むという特徴に変わりはない。
被害対象者も幅広いものの、特に、社会経験や知識、判断力に乏しい若年者や判断力の衰えや制限が見られる高齢者や障がい者は、こうした詐欺的投資被害に遭う危険性が高い。
このうち未成年者については、成年年齢が18歳に引き下げられることにより、それまで未成年者取消権により保護されていた18~19歳が、こうした詐欺的投資の標的とされることが懸念されたため、参議院法務委員会は、成年年齢の引下げの際、若年者の消費者被害防止及び救済のために必要な法整備等を求める附帯決議をした。また、高齢者や障がい者については、その判断力につけ込んだ消費者被害が懸念されてきた。
こうした懸念を受けて、2021年(令和3年)9月、「消費者契約に関する検討会」の報告書(以下「本件報告書」という。)が取りまとめられた。本件報告書で提案された具体案は、一部要件が厳格であったものの上記附帯決議に応える内容であった。しかし、第208回国会に提出され2022年(令和4年)5月25日に成立した「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律」(以下「本改正法」という。)では、消費者の判断力に着目したつけ込み型不当勧誘取消権の創設が含まれていないなど、本件報告書の要請に応えたものではなかった。そのため、若年者の投資被害拡大を防止するためには、本改正法とは別に、つけ込み型不当勧誘取消権の創設を含む消費者契約法の改正を行うことが急務となっている。
また、被害を防止するために効果があるのは、消費者が被害に遭わないための知識を持つことであり、消費者教育が重要であることは言うまでもないが、現状必ずしも若年者への十分な消費者教育が実践されているとは言い難い。こうした状況を改善するために、各学校現場において消費者教育をより積極的に導入するための国並びに沖縄県による予算措置や実行計画の策定等さらなる取組みが必要である。
さらに、高齢者や障がい者の被害を防止するためには、地方公共団体及び地域関係者が連携して、悪質事業者に狙われやすい高齢者や障がい者を継続的に見守り、被害を未然に防止し、早期発見によって被害の深刻化を防止する体制の確立が重要である。この点、消費者安全法は、消費者安全確保地域協議会(いわゆる「見守りネットワーク」)を組織することを求めている。他県では見守りネットワークの構築が進んでいる自治体もあり、沖縄県も2022年度(令和4年度)中に同協議会を立ち上げる方針を固めている。これらの状況に鑑みれば、沖縄県内における見守りネットワークが早期に組織されることが期待される。
かかる状況を踏まえて、当会は、
1 国に対し、本改正法とは別に、①消費者契約法第4条第3項各号の困惑類型の包括的脱法防止規定、②消費者の心理状態に着目した取消権、③消費者の判断力に着目した取消権の創設を含む消費者契約法の改正を早急に行うこと
2 国、沖縄県及び沖縄県内の各市町村に対し、若年者の消費者教育に関する施策を可能とする環境整備の推進及び必要な予算措置を講じること
3 沖縄県及び沖縄県内の各市町村に対し、高齢者や障がい者の消費者被害の予防・救済のために見守りネットワークを早期に組織し、地域の実情に応じた、効果的な見守り活動を促進していくこと
を求める。
2022年(令和4年)5月27日
沖 縄 弁 護 士 会
提 案 理 由
第1 消費者被害の実情
1 詐欺的投資被害の実態
一般消費者が、「必ず儲かる」「あなただけに紹介する」などと巧みに勧誘されて事業者に投資したものの、実際には儲けどころか投資額の大半が戻ってこず、勧誘した事業者に連絡を取ろうとしても行方が不明か事業破綻しており投資した金員の回収ができない詐欺的投資被害が後を絶たない。
詐欺的投資被害は、古くから社会問題化しており、時代とともに取引対象、契約形態や勧誘方法を次々に変化させつつ、現代でも被害を生み続けている。事業者によるその基本的な枠組み、すなわち、詐欺的事業者が被害者に対し、架空の儲け話や破綻必至の事業等への投資を持ちかけ、投資すれば必ず利益になると言葉巧みに誤信させ、被害者から金銭を取得する、という手法はいずれの時代でも違いはない。
また、同被害は被害回復が極めて困難であるという点も共通している。詐欺的投資勧誘を行う事業者は、そもそも実体のないペーパーカンパニーである場合も少なくなく、被害が発覚した後に被害者が事業者と連絡すら取ることができないという事案も多数報告されている。事業者が経営破綻すると、被害者がその被害を回復できる可能性は乏しい。多くの被害者が詐欺的投資被害に遭ったことを知る機会は、配当の遅延、減少、事業者との音信不通や、事業者の倒産、代表者の逮捕等である。かかる場合に事業者が返金に応じるということはなく、事業者が破産しても配当手続きに至らないか、配当に至ったとしてもその額は僅かである。このように、詐欺的投資被害に遭った被害者らの被害が回復されることは困難である。
2 詐欺的投資被害の被害者
このような詐欺的投資の被害者はこれまで高齢者が多かったが、近年では若年者の被害も報告されるようになっている。詐欺的投資は、架空の儲け話や破綻必至の事業等への投資を勧誘することが多いため、取引内容を冷静に確認できるだけの知識、経験や判断力が低い者らが被害に遭うことが多く、加齢と共に判断力が減退していく高齢者、判断力に制限のある障がい者や、知識や社会経験が不十分で判断力が未熟な若年者が標的にされやすい。
このように、詐欺的投資被害は、そもそも事業者と消費者との間に情報の質、量及び交渉力に大きな格差があることを前提に、知識・経験・判断力等の不足によって合理的な判断が困難な高齢者や障がい者、若年層等の属性の消費者を標的にして事業者が不当に勧誘を行い、甚大な被害を生じさせているという実態がある。
かかる被害に歯止めをかけるためには、個別の取引対象、契約形態や勧誘方法からの規制のみでは不十分であり、消費者の属性に対応した判断力に着目した取消権の創設が必要不可欠である。
第2 消費者契約法の改正が急務であること等
1 成年年齢引下げの際の附帯決議
成年年齢の引下げにあたり、参議院法務委員会附帯決議等では「知識・経験・判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して、事業者が消費者を勧誘し契約を締結させた場合における消費者の取消権(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)を創設すること」等の施策を講ずることが政府に対し提言されていた。
若年者は、その知識・経験・判断力の不足につけ込んだ消費者トラブルに巻き込まれやすい立場にあり、成熟した成人と比べ、熟慮して契約を締結するのが難しいこと、人からの誘いを断ることが難しいこと、自身の資力が乏しいことから儲け話等に乗ってしまいやすいこと等が指摘されている。そのために、知識・経験・判断力の不足に乗じたつけ込み型不当勧誘に対する取消権の創設が、上記附帯決議等で求められたものである。
2 消費者庁の研究、報告
上記附帯決議の後、消費者庁が設置した研究会・検討会においては、若年者の消費者被害に関する心理的要因の分析や法改正に向けた技術的側面の研究等が行われてきた。
「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の2018年(平成30年)8月付報告書では、若者の消費者被害の心理的要因を分析した結果、高揚感あるいは期待感をあおられて契約に至る被害類型や、本来の意思決定から注意がそれたり思考の範囲が狭まったり、思考力が低下した心理状態で契約に至る被害類型が多く見受けられることが指摘されている。「消費者契約法改正に向けた専門技術的側面の研究会」の2019年(令和元年)9月付け報告書では、「つけ込み型」勧誘に対する規律の方向性として、消費者の判断力に着目した規定、「浅慮」「幻惑」という心理状態に着目した規定、困惑類型の包括規定の創設を提示した。
これらの検討会・研究会の報告を受け、「消費者契約に関する検討会」が2019年(令和元年)12月から2021年(令和3年)9月まで計23回開催され、2021年(令和3年)9月に本件報告書が提出された。本件報告書では、「つけ込み型」勧誘に関し、①消費者契約法第4条第3項の困惑類型に関する脱法防止規定、②消費者の慎重な検討の機会を奪うような勧誘があった場合の消費者の心理状態に着目した規定、③判断力の低下した消費者が生活に著しい支障が及ぶような内容の契約をした場合の消費者の判断力に着目した規定という、3つの新たな取消権を創設することが提案された(以下上記①等を「本件報告書①」等と表記する)。
3 本件報告書について
本件報告書での提案は次のとおりであり、更なる検討が必要な点はあるものの、その大要はいずれも基本的に賛成すべき内容である。
すなわち、本件報告書①では、消費者契約法第4条第3項が、消費者を「困惑」させる勧誘方法を各号で規律しているが、消費者が「困惑」するに至る事業者の行為態様は様々であるから、包括的な脱法防止規定を設けることにより規制の漏れを避けることができるとするものである。本件報告書①においては、消費者契約法第4条第3項第1号、第2号、第7号、第8号について脱法防止規定を設ける旨の提案がなされており、この方向性については評価できる。ただし、脱法防止規定は消費者契約法第4条第3項各号全てに設けるべきである。
本件報告書②では、検討時間の制限によって焦って判断することを余儀なくされる場合、広告と異なる内容の勧誘を行って不意を突く場合、長時間の勧誘により疲労させたりする場合、儲け話で一方的に高揚感や期待感をあおられた場合等の様々な状況によって消費者が冷静かつ十分な判断ができなくなるおそれがあることを指摘し、消費者の意思決定が歪められた場合における取消権が提案されている。このような冷静かつ十分に契約内容を吟味できない心理状態で契約が締結された場合には消費者に取消権が認められるべきであり、本件報告書②に対応した取消権を設けるべきである。
本件報告書③では、消費者の判断力の客観的な低下を前提としつつ、消費者の生活を将来にわたり成り立たなくするような契約について、この点についての事業者の悪意または重過失が認められる場合に取消しを認めるべき旨が提案されている。取消の要件について事業者側の悪意重過失という主観的要件を要求する点は実効性確保の点から再検討もしくは過失にとどめるべきではあるものの、意思無能力とまではいえないが判断力が低下している消費者という、現行法上は救済が困難な類型を取り込んでいる点や、契約内容という客観的な観点から取引の可否が判断できる点では評価できる。
4 法改正等がなされないままの成年年齢の引下げと新たな消費者契約法等の改正が急務であること
上記のとおり、本件報告書の内容はいずれも消費者契約法の改正案に盛り込まれるべきであったと思料されたが、前記附帯決議等を受け、本件報告書が提案した消費者契約法等の改正がなされないまま、成年年齢は引き下げられてしまった。
すなわち、成年年齢引下げに先立ち第208回国会に提出され本年5月25日に成立した本改正法には、本件報告書の3つの取消権に対応する規定がいずれも盛り込まれなかった。消費者契約法第4条第3項の取消し得る困惑類型として、勧誘をすることを告げずに退去困難な場所へ同行し勧誘した場合、圧迫する言動を交え相談の連絡を妨害した場合が追加されたのみであり、同項の脱法防止の包括規定、心理状態に着目した一般規定や判断力に着目した取消権等が設けられることはなかった。前記附帯決議を受けて有識者が長時間にわたって議論を重ねた本件報告書の内容と本改正法がここまで乖離することは問題である。本改正法の衆議院及び参議院の附帯決議においても「判断力の低下等の個々の消費者の多様な事情に応じて消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができる制度の創設」は言及されており、つけ込み型不当勧誘取消権等の創設の必要性は明らかである。
従前から悪質事業者の標的とされてきた高齢者や障がい者に加えて、本法律の施行により未成年者取消権を失う18歳、19歳に対する消費者被害の拡大が予想されることから、本改正法とは別個に、早急に、決議1記載のとおりの法改正がなされるべきである。
第3 消費者教育の拡充が図られるべきこと
1 成年年齢引下げに伴う参議院決議等
前述のとおり、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられることになったが、未成年者取消権の喪失等による消費者被害の拡大への懸念が指摘されており、参議院法務委員会は、法成立後2年以内に若者のマルチ商法等の被害の実態に即した必要な措置を講ずること、消費者教育の充実を図ること等具体的施策を示した附帯決議を全会一致 で採択し、これらの諸施策を施行までの3年10か月の間に実施する ことを求めていた。
2 これまでの対応
これを受けて、国は、成年年齢引下げ後の若年者の消費者教育推進方針として、高等学校等における実践的な教材・資料や実務経験者の学校教育現場での活用及び教員の養成・研修、大学・専門学校等と消費生活センターの連携、消費者教育推進の体制整備等を挙げているものの、消費者教育の具体的手法、内容等は確立していない。また、現時点においても、成年年齢が18歳に引き下げられたことの周知は一定程度進んだものの、その弊害として未成年者取消権を18歳で失うことの意味や、若年者の身近に起こりうる消費者被害についての情報等の周知、消費者教育が十分に実施されているとはいえない。
18歳、19歳の若年者は、知識・経験・判断力の乏しさから、情報を取得し交渉の上契約をすることが難しく、人間関係の影響を受けやすいことなどから、消費者被害が拡大する傾向にあると言われている。沖縄県においても、若年者における消費者被害が多く発生しているところ、被害者の中には大学や専門学校を中退せざるを得なくなる等、その将来に深刻な被害を受けた者も存在する。成年年齢引下げを踏まえ、若年者の消費者被害の防止・救済の観点から、悪質商法被害や契約トラブルに関する実践的かつ即効性のある消費者教育を実施することは急務である。
当会でも、これまでに県内の中学校、高等学校、専門学校、大学からの要望により、消費者教育に関する出前授業を実施しており、近年では、教職員及びPTA向けの勉強会なども実施している。しかしながら、学校側のカリキュラム編成による時間的制約や、予算措置に伴う財政的負担の点からも、各個別の学校の努力にも限界があると言わざるをえない。
そこで、消費者教育を推進する責務を負っている国及び地方公共団体が、消費者行政及び教育行政の担い手として、消費者教育の拡充に向け、地域や家庭とも連携して、若年者が消費者教育を受けられる機会の確保、学校教育現場における授業時間や予算の確保などを制度的に整備する施策を推進していくことが必要である。
3 小括
以上のことを踏まえ、当会は、国、沖縄県及び沖縄県内の各市町村に対し、若年者の消費者教育に関する施策の環境整備を推進すること及びそれに必要な予算措置を講じることを求めるものである。
第4 見守りネットワークの確立、拡充について
1 高齢者や障がい者の消費者被害の特徴と見守りネットワークの必要性
令和3年度消費者白書によると、高齢者の消費生活相談件数は、相談件数全体の約3割、相談全体の既払額総額の約4割近くを占めており、高齢者の消費者被害は、他の年齢層と比較して深刻な状況である。このうち、認知症等の高齢者については、本人から相談が寄せられる割合が2割に満たないという特徴がある。また、障がい者についても、本人から相談が寄せられる割合は約4割という状況である。すなわち、認知症等の高齢者や障がい者には、本人がトラブルに遭っているという認識が低いために、問題が顕在化しにくいという特徴がある。
そのため、認知症等の高齢者や障がい者の消費者トラブルの未然防止や被害拡大の防止のためには、家族のみならず、近隣住民や福祉事業者、行政機関等が連携して見守っていくことが重要である。具体的には、その高齢者や障がい者が生活する地域においてその生活に密着している様々な見守りの担い手が、見守りの中で発見した消費者トラブルの情報を適切に相談につなぐことができる体制を構築することが必要となる。
2 沖縄県内で見守りネットワークが組織されることが急務であること
上記のような体制を構築するには、地域包括支援センター、社会福祉協議会、消費生活センター、自治体関係者、介護事業関係者、都道府県警察、消費者団体、弁護士会等で構成されるネットワークを作り、個人情報保護法の例外規定の適用による情報共有を行う等して効果的に見守りを実施することが不可欠となっている。
このような課題に対応するため、2014年(平成26年)6月の消費者安全法の改正により、地方公共団体に消費者安全確保地域協議会(見守りネットワーク)を設置することが可能となった(同法第11条の3)。国は、人口5万人以上の全市町での設置を目標に掲げており、2022年(令和4年)4月末時点で全国1788の地方公共団体のうち386の地方公共団体で設置されるに至っている。
ところが、このように全国各地の自治体で見守りネットワークの設置が進んでいる一方で、沖縄県及び沖縄県内の市町村には設置がなされていない。都道府県内の自治体に一つも設置がなされていないのは、全国で沖縄県のみである。
このような状況を踏まえ、当会主催により、2021年(令和3年)9月23日、日弁連第63回人権擁護大会岡山大会のプレシンポジウム「高齢者・障がい者の消費者被害とその予防・救済におけるネットワークのあり方」が開催され、沖縄県内の見守りネットワーク設置に向けた課題を検討するとともに、高齢者や障がい者の消費者被害の予防と救済のため、地域や専門家との連携及び地域での見守りの重要性が確認された。
沖縄県においても2022年度(令和4年度)に県消費者安全確保地域協議会(仮称)の設置を予定しており、県内の市町村に対しても見守りネットワークの設置を促すことが予定されている。
消費者安全の確保に関する施策の実施は、国及び地方公共団体の責 務とされているところであるから(同法第3条、第4条)、国においても沖縄県及び県内各市町村と連携し、設置後の見守りネットワークの実効的な運用を行うべきである。
当会としても、高齢者や障がい者の消費者被害の予防と救済のため地域や専門家との連携及び地域での見守りの重要であるとの認識の下、高齢者や障がい者の消費者被害の予防と救済のための見守りネットワークづくりへの参加・協力、見守り活動のための研修等への講師派遣、高齢者や障がい者向け相談体制の整備等、ネットワーク作り及びその活動に可能な限り支援・協力を行うことを予定している。
3 小括
以上から、当会は、沖縄県及び沖縄県内の各市町村に対し、高齢者や障がい者の消費者被害の防止・救済のため、見守りネットワークを設置することを求める。
第5 結語
詐欺的投資被害の勧誘は、時代に応じて手を変え品を変えて消費者を脅かしており、悪質事業者から消費者を守るためには様々な観点からの抜本的な対策を図る必要がある。
かかる対策として消費者契約法の改正が必要不可欠である。前記参議院附帯決議において提言されていたにもかかわらず、第208回国会においてもかかる改正は盛り込まれなかった。本件報告書や再三の附帯決議からすれば、改正の機は熟したと言ってよい状況であり、早急につけ込み型不当勧誘取消権の創設等の消費者契約法の改正を行うべきである。
併せて、若年者や高齢者や障がい者といった類型的に脆弱性を有する消費者への予防策も必要である。若年者の消費者が標的とされた消費者被害が報告されていることや、超高齢化社会の進展、ノーマライゼーションの進展といった社会情勢に鑑みれば、取消権の創設と並行して、これらの消費者への被害予防も重要な課題である。学校教育におけるカリキュラム編成の困難さや予算確保等の課題もあるが、若年者の消費者被害予防のため、消費者教育の拡充は急務である。
見守りネットワークについては沖縄県も2022年度(令和4年度)中の制度立ち上げを表明したところであり、県内各市町村においてもこの時機を得て速やかに実現されるべきである。
以上から、沖縄県内における消費者被害の防止を図るべく、本決議の採択を提案するものである。
以上