決議・声明

成年年齢引下げによる若年者の消費者被害拡大を防止する施策実現等を緊急に求める会長声明

 

 民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げる「民法の一部を改正する法律」(平成30年法律第59号。以下「本法律」という。)が、本日施行された。
 この成年年齢の見直しは、1896年(明治29年)に民法が制定されて以来、120年ぶりであり、現行の法律や制度のあり方に及ぼす影響は非常に大きい。
 それにもかかわらず、成年年齢引き下げによる消費者被害の拡大防止などの課題の多くは残されたままである。
 本法律成立に際し、参議院法務委員会は、法成立後2年以内に、知識、経験、判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して勧誘し契約を締結させた場合における消費者の取消権(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)を創設すること、若者のマルチ商法等の被害の実態に即した必要な措置を講ずること、消費者教育の充実を図ること等具体的施策を示した附帯決議を全会一致で採択し、これらの諸施策を施行までの3年10ヶ月の間に実施することを求めていた。
 この間、当会でも、2018年(平成30年)12月に民法の成年年齢引下げの問題点を検討するシンポジウムを開催し、2021年(令和3年)7月1日には、「成年年齢引下げによる若年者の消費者被害拡大を防止する施策実現等を求める会長声明」を発出して、国に対し、上記附帯決議に示された諸施策の速やかな実現を求めるとともに、仮にこれが実現されないときは、少なくとも未成年者取消権の行使可能年齢を引き下げる部分について施行日を延期することを求めてきたところである。
 しかしながら、現時点においても、成年年齢が18歳に引き下げられることの周知は一定程度進んだものの、その弊害として未成年者取消権を18歳で失うことの意味や若年者の身近に起こりうる消費者被害についての情報等の周知や消費者教育が十分に実施されているとはいえない。
 また18歳、19歳の若者が未成年者取消権を喪失することによる若年者の消費者被害拡大に対応するために必要不可欠な施策であるつけ込み型不当勧誘取消権の創設は、施行日を迎えた今に至ってもなされておらず、十分な議論もなされていない。
 上記状況を踏まえ、当会は、本法律の施行日に当たって、国に対し、若年者の消費者被害防止のための実効性のある諸施策を緊急に実現することを改めて求めるとともに、本法律施行後に生じた若年者の消費者被害の内容や傾向を直ちに分析・検証しこれらを踏まえたさらなる被害防止のための施策を検討実施していくことを求める。

2022年(令和4年)4月1日     
沖縄弁護士会            
会 長 田 島 啓 己     

 

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