死刑執行に抗議する会長声明
昨年12月21日、東京拘置所及び大阪拘置所において3名の死刑が執行された。岸田内閣発足後、初めての執行である。
前回の執行は、2019年12月26日であった。その後約2年間、死刑の執行がない状態が続いていたにもかかわらず、再び、死刑が執行されたことは誠に遺憾である。
犯罪により命が奪われた場合、失われた命は二度と戻ってこない。ご遺族が加害者に対し厳罰を望むことはごく自然なことであり、その心情は十分に理解できるところである。犯罪被害者やご遺族を支援する我が国の施策はいまだ不十分であり、これを抜本的に拡充していくことは喫緊の課題である。
我が国は、死刑制度を維持し、コンスタントに死刑執行を続けてきているが、国際的には、死刑廃止が確固たる潮流になっている。その背景には生命の絶対不可侵性という理念・価値観の普遍化がある。国際社会の一員として我が国もこうした国際的動向を軽視することはできない。確かに、政府世論調査によれば、多数の国民が死刑制度を容認していると評価できるものの、将来の死刑制度廃止の可否という観点で見ると、賛否は拮抗してくる。また、死刑固有の犯罪抑止力は証明されていないなど死刑制度の合理性が十分に裏付けられているともいえない。他方、死刑判決を下すのは人であり、死刑制度がある以上、誤判による死刑執行を避けることはできない。
こうした事情等を踏まえ、当会は、本年3月11日の臨時総会において、政府及び国会に対し、死刑の代替刑を導入するとともに、犯罪被害者支援の抜本的拡充をした上で、死刑制度を廃止することを求める決議を採択したところである。
今回の死刑執行に対し、当会は、強く抗議するとともに、改めて、政府に対し、死刑の代替刑の導入及び犯罪被害者支援の抜本的拡充とともに死刑制度を廃止すること、それまでの間、死刑執行を停止することを求める次第である。
2022年(令和4年)3月15日
沖縄弁護士会
会長 畑 知 成